遺伝子組み換え大国アメリカ
いま何が起こっているのか
アメリカ食品安全センター上級スタッフ弁護士
ペイジ・トマセリさんの講演
食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク(食農市民ネット)は、5月に都内3カ所で、アメリカ食品安全センターの上級スタッフ弁護士のペイジ・トマセリさんを招いて講演会を行いました。遺伝子組み換え(GM)大国アメリカでいま何が起こっているのか。トマセリさんの講演大要を紹介します。
アメリカでは、大豆の94%、トウモロコシ72%、綿花80%、ナタネ90%、テンサイ95%、アルファルファ33%、パパイア80%がすでに遺伝子組み換えです。GM作物全体の85%強が除草剤耐性、40%強が殺虫性、両方に耐性をもつものが26%です。
環境への悪影響
枯れない草ふえ 除草剤使用激増
まずGM作物は環境に悪影響を与えます。花粉による交配を意味する異花受粉、種の混入、自生などGM汚染は避けられません。
除草剤をまいても枯れないスーパー雑草が増え、除草剤の使用量が激増します。除草剤ラウンドアップの成分グリホサートが効かないジョンソングラスは有名です。さらに大豆畑に繁茂するヒメムカシヨモギもグリホサートが効かず、農民はより強力な農薬を使わざるをえなくなっています。
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報告するペイジ・トマセリさん |
アメリカでは、農薬使用量は、GM作物の栽培により、1996年から5年間で4億400万ポンド(約1億8300万キログラム)増加したのです。
また、殺虫成分(Bt)に耐性のある害虫も増加し、栽培作物以外の動植物への影響もでています。その例が、渡りチョウであるオオカバマダラの急速な激減です。オオカバマダラの幼虫にとってトウワタは餌として欠かせません。ラウンドアップがトウワタを除去してしまい、オオカバマダラも減っているのです。
表示制度は―
GM食品の表示 企業の自発性に
次に、アメリカでのGM食品の表示制度についてお話しします。度重なる世論調査で、常に90%以上がGM作物を含む食品の表示を希望しています。
しかし、アメリカ食品医薬品局(FDA)は1992年、GM食品には他の食品と比べて「重要な」相違がなく、表示義務がないことを決定しました。その「重要な」相違とは、味覚、きゅう覚など人が感知できる相違にのみ限定してしまっているのです。FDAは2000年にも、GM食品の表示は今後も自発性に任せると発表しました。
こうして、自発的なGM表示の方法の例として、「アメリカ農務省有機」表示、「非遺伝子組み換えプロジェクト確認済み」表示があります。
有機認証ラベルは、独立機関により設定された厳しい基準になっています。「遺伝子組み換えなし」ラベルは、食品会社による自己申告です。
表示義務を負わせる取り組みとして、全国レベルでは、遺伝子組み換え魚表示法案が審議され、各州では、組み換え表示の法的取り組みが26州、GM魚に対する規制が14州で行われています。
表示求める運動 米各地で盛んに
表示を求める住民投票では、カリフォルニア州で2012年に行われ、表示法案支持46・9%、反対53・1%のきん差で否決されてしまいました。食品会社やGMO開発会社が巨費を投じ、「食品価格が上がる」などのコマーシャル攻勢がマスメディアを使って大々的に繰り返されました。
ワシントン州では11月に住民投票が行われる予定です。その他、コネチカット州、オレゴン州で住民投票が行われる可能性があるなど、全米各地で、運動が盛り上がっています。
(新聞「農民」2013.6.10付)
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