原発推進勢力の
責任回避に批判集中
「ふるさとを失った損害」早く
シンポ「東電解体と賠償問題」開く
5月23日、東京都の渋谷商工会館で、原発ゼロノミクスキャンペーンとしてeシフトが主催したシンポジウム「東電解体と賠償問題」が開かれました。
福島原発事故による避難者はいまだ15万人以上、賠償の支払は遅れ、避難区域の再編によって賠償の打ち切りが始まっています。
なぜ生き残ったか
「なぜ東電は生き残ったか」と題して報告した東電株主代表訴訟原告代表の堀江鉄男氏は、原発を推進してきた東電、金融機関、原子力メーカー、ゼネコンなど関連会社への賠償責任には全く触れない「原子力損害賠償法」にもとづく「原子力損害賠償支援機構」の問題点を告発しました。
2010年から13年の3月末決算書をもとに、損害賠償金は全額、国の税金を交付金として受け取り、賠償金は後払いで被害者に支払い、東電には常に数千億円の現金が滞留していると報告しました。
さらに、「原発は停止していても固定費は大きく経営を圧迫している。赤字は、原発停止に起因する。赤字解消には『原発再稼働』か『電気料金値上げ』しかない」と迫る政府と東電の対応を批判し、「原子力政策を推進した国が責任を持って、東電を『実質国有化』でなく『国有化』し、『原発ゼロ』を目指すべきだ」と結びました。
ゆがめられた賠償
「ゆがめられた賠償」と題した報告をおこなった除本理史大阪府立大学大学院准教授は、15万人に及ぶ被害者の現状を「今、福島市で子育てをする人々には『究極の選択』が突きつけられている。『将来の健康不安を抱えながら福島市で暮らす』のか、『生活の見通しはつかないけれど、福島を出る』のか。でも、私たちは、それ以外を選択したい。『避難生活』も『福島市に住み続けること』も、どちらも安心・安全で自由に選択できる世の中にしたい」という女性の声を示し、原発事故によって、住民の間に本来なかった対立が浮かび上がっていると紹介。
東電の損害賠償は、このような深刻な被害を、加害者が補償範囲を決めることになっている異常さを告発しました。
紛争審の背後に…
原子力損害賠償紛争審査会が決めた「指針」は、「最低基準である」と明記しているにもかかわらず、東電は「指針」を最高とし、被害者の賠償請求の内容を査定しています。
さらに、昨年7月、東電が発表した家屋や農地など固定資産の評価基準のあまりのひどさに「東電が、補償基準の策定プロセスを、紛争審から自分の手もとに奪い取った」という批判がありましたが、この背後に経産省が密接に関与していたことを明らかにしました。
討論では、「ふるさとを失った損害」に対して、紛争審では何の議論も起こっていないこと、国をはじめ原発推進勢力に責任を取らせる方法など、多様な質問や意見が出されました。
(農民連常任委員 齊藤敏之)
(新聞「農民」2013.6.10付)
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