都市農地の固定資産税問題
和歌山市農民組合 貴志(きし)正幸さん
(交流会での発言から)
三大都市圏特定市以外の多くの自治体が、市街化区域農地を生産緑地として認定しないことから、岡山県倉敷市などでは10アール当たり40万円超と高額の固定資産税になっています。農民連都市農業対策部は4月24日に都内で「都市農業対策交流会」を開き、和歌山市農民組合の貴志正幸さんが、生産緑地の申請を勝ち取った実践を発言しました。発言要旨を紹介します。
生産緑地指定かちとり
高額の税金を大幅軽減
三大都市圏外は重税
和歌山市では、1971年に市街化区域が設定され、農地は、1979年から毎年、固定資産税が引き上げられてきました。その結果、米しか作れない低湿地の水田でさえ、10アール当たり12〜8万円の固定資産税になりました。
市役所へは、引き下げを求める農家の声が次々と届けられたのですが、市当局は「国の制度であり、生産緑地の指定はできない」の一点張りでした。
1997年、大阪農民連に相談したところ、三大都市圏でとられている生産緑地制度を適用させることと、固定資産税を軽減させることを提案され、さっそく和歌山市役所に要請。市は「検討しましょう」ということになりました。
ところが、市は、「税収の中心である固定資産税が減ってしまう」と、生産緑地の指定はなかなか進みませんでした。
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農民連主催の「都市農業対策交流会」=4月24日 |
そこで、農民組合では、市内のJA、JA青年部、水利組合等と、和歌山大学の橋本卓爾教授(当時)を講師に、生産緑地制度の学習会を3回開催し、県や市に要請運動を繰り返しました。
2006年、念願の「生産緑地申請の受け付け」が始まり、指定を受けた農地は、翌年から固定資産税が30〜50分の1に軽減しました。
公道に接すると除外
ところが、指定要件が「市道や県道などの公道に接していること」から、まったく指定されない農家も多数出ました。また、市が「30年間の営農義務」を強調したことから、申請をためらう農家も出ました。
農民組合は、これでは「都市農業は守れない」と、市当局にJAや農業委員会と一緒に(1)公道に接するとの条件は、法律にはないこと、(2)1団の農地が500平方メートル以上はすべて指定すること、(3)“30年間の営農義務”という表現は間違っており、主たる従事者が死亡した場合に買い取り申請ができることなどを主張し続け、「30年の営農義務」という表現は2010年からなくなり、指定要件の2度にわたる緩和を勝ち取ってきました。
和歌山市では、これらの取り組みで、毎年追加申請が行われ、7年目の2012年、69ヘクタール、市街化区域内の農地の1割余にまで広がりました。
指定要件の緩和こそ
現在、三大都市圏の特定市以外で、市街化区域農地に、生産緑地制度を取り入れている市町村は、和歌山市を含めて6つにとどまり、生産緑地の指定状況では、和歌山市以外の5市町村で和歌山市の約20分の1の面積です。
今後、市街化区域農地のあるすべての自治体に、生産緑地の指定を要求すると同時に、指定要件を緩和させ、指定率を高めていく必要があると思います。
(新聞「農民」2013.6.3付)
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