「農民」記事データベース20130603-1071-01

農林水産業・関連産業への影響

TPP
生産10・5兆円減
190万人雇用失う

大学教員の会が独自試算発表


 全国の大学教員や研究者ら約900人でつくる「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は5月22日、国会内で記者会見を行い、独自に調べたTPP影響試算の結果を発表しました。会見には、醍醐聰東京大学名誉教授、鈴木宜弘東京大学教授、土居英二静岡大学名誉教授、関耕平島根大学准教授、三好ゆう桜美林大学専任講師が出席しました。

画像
試算結果を発表する(左から)三好、関、土居、鈴木、醍醐の各氏

 政府の試算とのズレが生じる

 それによれば、政府の試算と同様に農林水産物33品目の関税を撤廃した場合、農林水産物の減少額は、政府統一試算の約3兆円より5000億円多い約3兆5000億円となり、農林水産業と関連産業を合わせた生産減少額は約10兆5000億円にのぼることがわかりました。

 また、農林水産業で146万人、関連産業を合わせて190万人の雇用が失われ、国内総生産(GDP)は約4兆8000億円(1%)落ち込むとしました。

 政府の試算とのずれが生じたことについて、醍醐教授は「生産の縮小が所得の減少を招き、さらに消費の縮小を生じて生産の縮小につながるという『跳ね返り』の効果を考慮することで、農林水産物の生産減少額が政府の試算より5000億円増えることがわかった。農林水産業の関連産業への波及効果を試算することによって生産減少額が約7兆円増えた」と説明しました。

 県別や税収への影響も試算へ

 さらに、営農部門別・品目別の試算だけでは、輪作作物に及ぼすドミノ型影響をとらえられず、営農部門をまたぐ耕畜連携などの資源の循環も計算されないと指摘しました。

 「大学教員の会」で北海道に調査に訪れたことを紹介し、「たとえば北海道では、TPPへの参加・関税撤廃で麦、バレイショ、テンサイが輸入に置き換わると、4年輪作の体系が崩れて豆類も壊滅的打撃を受け、平均的な畑作農家は従前の収入の半分近くを失うことになる」と述べました。

 大学教員の会は今後、すべての都道府県別や税収への影響を試算したものを発表する予定です。

 大学教員の会による試算の詳細は、同会のホームページ(http://atpp.cocolog-nifty.com/)でみることができます。

(新聞「農民」2013.6.3付)
ライン

2013年6月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2013, 農民運動全国連合会