「農民」記事データベース20130527-1070-01

市民共同発電所建設に大きな協力を

自然エネルギー普及を
市民・住民の手で

自然エネルギーへ転換

関連/持続可能な社会つくるチャンスは農村にある

 福島県農民連と「自然エネルギー市民の会」が連携して、福島県伊達市霊山町に建設する「福島りょうぜん市民共同発電所」への出資者の募集が始まりました。


収入の2%を福島復興基金へ

 利益は地元に還元

画像 「市民共同発電所」とは、市民や地域住民から募った寄付や出資、行政からの補助金などをもとに、NPO法人や民間会社が設置する再生可能エネルギーの発電施設(所)のこと。市民が少しずつ資金を出し合って、市民・住民の手で自然エネルギーを普及させる実践的な取り組みです。

 自然エネルギー市民の会は、「自然エネルギーはその地域のものであり、利益は地域に還元する」という立場から、市民との共同で自然エネルギーの普及に取り組んできた、大阪市に事務所を置く市民団体です。

 県内6カ所で計画

 同会と、福島県農民連の出合いは、昨年の8月。福島原発事故の深刻な被害に直面し、再生可能エネルギー事業を真剣に模索していた福島県農民連に、各地で自然エネルギー事業を手掛けてきた同会のノウハウが大いに生かされ、福島県農民連が「りょうぜん市民共同発電所」以外にも県内5カ所で計画している中規模太陽光発電の前進にも大きな力になっています。

 福島に何度も足を運び、福島県農民連と話し合いを重ねてきた同会専務理事で弁護士の早川光俊さんは、「福島の厳しい現実を目にするたびに、なんとかして福島の皆さんの力になれないか、若い人が福島に残っていけるように何かできないか、と痛切に思ってきました」と、この事業にかける思いを話します。

 「原発ゼロは将来世代への私たちの責務です。脱原発のためにも、地球温暖化防止にも、再生可能エネルギーへの転換が求められているのです」

画像
市民共同発電所の建設予定地

 持続的に支援したい

 太陽光パネルの設置場所は、福島県北農民連会長の大橋芳啓さんの遊休地。ここに52・5キロワットのQセルズというドイツのメーカーのソーラーパネルを設置し、年間売電収入は200万円程度を見込んでいます。

 必要な資金額は2000万円で、出資は一口20万円とし、予定配当率は1・2%、20年で22万5200円の元本償還と収益配当を予定しています。

 また、売電収入の2%を福島復興基金として積み立て、福島県農民連と相談しながら、さらに発電施設を増設するなど、復興に活用していくことにしています。「この市民共同発電を通じて、今後も持続的に福島にかかわり、復興に役立ちたい。ぜひ多くの人に出資に協力してもらいたいと思っています」(早川さん)――福島の復興と、原発ゼロへの熱い思いのこもった市民共同発電の取り組みです。


持続可能な社会つくる
チャンスは農村にある

福島県農民連 佐々木健洋

 昨年7月から始まった固定価格買取制度により、市民・農民にも再生可能エネルギー事業に活路が開かれました。しかし現在設置が進んでいるのは、大企業による大規模な太陽光発電が多く、市民・農民による取り組みは極めて少ないのが現状です。福島県農民連は自ら再生可能エネルギーに取り組みつつ、同時に多くの市民が参加できる市民出資発電所にも協力していきたいと考えています。

 これまで電力会社から電気を購入することで、光熱費などとして地域外に流出していたお金が地域に留まり、循環するようになります。また市民・農民が出資したり、金融機関から融資を受けて自らが発電施設の所有者となることで、行政には税収が増え、発電施設の設置・メンテナンスをする雇用も生まれます。原発再稼働を進めたい“原子力ムラ”に対し、市民がこうした対案を示し、実現することが重要です。

 人口減少、高齢化に向かう今、経済成長の呪縛(じゅばく)から解放され、原発・化石燃料に頼らない持続可能な社会をつくるチャンスです。そしてその可能性は農村にあります。自然の手入れをし、自然の恵みを無駄にしないように取り入れる持続可能性を、今こそ農村で実現したいと考えています。

(新聞「農民」2013.5.27付)
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2013年5月

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