分析センターだより
化合物類の分析強化をさらに
4月9日付の毎日新聞に、日本海の海水を汚染するある物質の濃度が4倍ほど高まったという記事が載りました。
その物質はフッ素を多く含んだ界面活性剤(洗剤のようなもの)でPFSsと呼ばれています。安倍政権が進めているTPPよりもなじみのない横文字ですが、PFSsは残留性が高いため、国際的に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」で、ダイオキシンやPCBなどと同じように削減・廃絶するよう取り決められ、日本はそれを締結・批准しています。
ところで、この調査では2種類のPFSについて調べられました。ひとつは条約で規制されるPFOS、もうひとつは規制されないPFOA。両方とも、世界最大のメーカーだった3M社は生産をやめています。しかし、記事記載のデータによれば、規制を受けたPFOSは増えていませんが、そうではないPFOAが「最大4倍」増えたとされています。
残念なことに、この条約で規制される化合物は世界に数多くある化合物のほんの一部で、今回の例のようにリストから漏れたものは環境中の濃度が増えていく可能性がこれからもあります。例えば、ある種の医薬品の成分や代謝物が河川水などから検出される例はすでにあります。日常的に食べ物から取り入れる合成食品添加物や、農薬についてはどうでしょうか。そしてこういうものの蓄積が何を引き起こすのか、誰も知りません。
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農薬分析で活躍するGC―MS(ガスクロマトグラフ質量分析計) |
これまでに、農民連食品分析センターは多くの方の募金でガスクロマトグラフ質量分析計(GC―MS)を設置しましたが、上記の化合物類の多くはその力をもってしても測ることはできません。水に溶けやすいものは液体クロマトグラフ質量分析計(LC―MS)が必要です。同じことは農薬分析においても言え、さらなる強化が必要だと日頃感じるものです。
(仲前)
(新聞「農民」2013.5.6付)
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