映画「世界が食べられなくなる日」
原子力と遺伝子組み換え
2つのテクノロジーを告発
原子力と遺伝子組み換えの2つのテクノロジーの問題点を描いた映画「世界が食べられなくなる日」(ジャン=ポール・ジョー監督、フランス)が6月8日から東京・渋谷アップリンクで公開されます。
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ジャン=ポール・ジョー監督 |
「20世紀に世界を激変させたテクノロジーが2つあります。核エネルギーと遺伝子組み換え技術です。これらは、密接に関係しています。アメリカ・エネルギー省は原爆につぎ込んだ金と技術者を使って、ヒトゲノムの解析を始めました。そこから遺伝子組み換え技術が誕生しました」。フランス・カーン大学のジル=エリック・セラリーニ教授(分子生物学者)は映画の冒頭でこう警告します。
命の根幹を脅かす2つのテクノロジーの3つの共通点、それは後戻りできないこと、すでに世界中に拡散していること、そして体内に蓄積されやすいことです。
教授は、さらにこう指摘します。「原爆も遺伝子組み換え技術も、開発したのは世界の富の半分を支配する250の企業グループです。この体制が支配者を生み、民衆を犠牲にしてきたのです。遺伝子組み換え作物や原発を作る者の利益のために、すべてが犠牲になるのです」
セラリーニ教授は2009年、ラットのえさに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(除草剤ラウンドアップ)をいくつかの組み合わせで混ぜて与え、長期にわたる実験を行いました。実験期間は、ラットの寿命に相当する2年間です。
カメラはこの2年にあたる実験を追い、その結果、ラットに腫瘍(しゅよう)の発生率と死亡率の上昇がみられ、大きな波紋を投げかけました。
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遺伝子組み換えのえさを食べ続け、腫瘍が大きくなったラット(映画の1シーンから) |
福島県農民連会員も“原発なくせ”と訴え
原発事故の問題では、福島県農民連の会員が登場し、原発の理不尽さを切々と訴えます。稲作農家の郡俊彦さんは「ここの山々、川、田んぼ。かつては安全に生活していました。しかし、もう合鴨農法で有機稲作をすることができません」と言い、酪農を営む長谷川健一さんは「人間が放射能を作り出しました。その魔物は、一度怒らせてしまうと止めることはできません。その結果、すべての家畜を殺すことになったのです」と訴えます。
「福島の農民を救うために彼は活動している」と、県農民連の根本敬事務局長が紹介されます。夫が東電に対する抗議で自殺した樽川美津代さんは「原発さえなければ、こうはならなかった。空と海ですべての国はつながっています。世界中が原子力に反対しなくてはなりません」と呼びかけます。
監督は「日本がTPPに参加しようとしていることは、将来の世代への裏切りになります。TPPと原発に反対し、ただちに行動すべきです」とメッセージを寄せてくれました。
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映画は6月8日から順次全国で公開。上映の問い合わせは、アップリンク(松下さん、中村さん)まで。連絡先はTEL03(6821)6821。
(新聞「農民」2013.5.6付)
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