酪農経営について聞く
全国優良畜産経営管理技術発表会で最優秀賞を受賞した
酪農家 広野正則さん(61)=香川県三木町
地域の強みを生かし効率的な経営こそ
生産者・消費者にいい地産地消
香川県三木町の酪農家、広野正則さん(61)は、2012年度全国優良畜産経営管理技術発表会で最優秀賞を受賞しました。夫婦と長男の息子さん(35)で有限会社広野牧場を経営し、正社員9人、パート7人で搾乳牛265頭、繁殖和牛22頭を育てています。現在、食料・農業・農村政策審議委員のほか、地域交流牧場全国連絡会副会長もしています。広野さんに酪農経営について聞きました。聞き手は、香川県農民連の福井利夫事務局員。
経営は統合的なバランスが大切
福井 最優秀賞受賞おめでとうございます。
広野 今回の受賞で、今までの「自家育成・自給飼料」主体の評価から、地域の強みを生かした効率的な経営に目を向けたことへの変化を感じました。
経営はまず「数字」が大事です。私のケースでいうと、乳牛1頭で年間1万リットル分の牛乳と生まれるF1子牛を入れると年間の売り上げが121万円になり、それに頭数を乗ずると年間売り上げが計算できます。経費は毎月税理士と前年対比で検討しています。それで毎年の見通しを把握します。
福井 酪農経営のポイントは?
広野 別にこれといったことはしていませんが、あえて言うなら、夏の暑さ対策や搾乳頭数の維持などです。搾乳頭数とは分べん頭数のことで、1頭当たりの固定経費が上がらないように効率的な経営を心がけます。新潟のお米は高価に売れていますが、滋賀のお米は効率的な生産で同じような利益をあげています。経営は総合的なバランスが大切です。時間とお金を使って情報を取ることも必要です。
“夢を形にする”ためどうするか
福井 効率的な経営とはなんでしょう?
広野 TPPでいわれる「国内で不足していても外国に高く売れるものを売ったらいい」という考えが理解できません。農畜産物は価格の割に輸送コストが高くつきます。地産地消を進めれば、この経費は大きく削減でき生産者、消費者ともにいいはずです。
福井 最後に、青年後継者にアドバイスをお願いします。
広野 「夢を形にする」ためにどうするのか。まず立ち上げ期は年間4000時間程度は働くことが前提です。年間500万円をもうけたいとします。そのためには売り上げ計画をきちんと立てて、自分の優れた部分が何か、欠けている部分は何かを把握することです。
結局、収入を左右するのは「欠けている部分」を克服できるかどうかだと思います。それで1年間やってみてその計画を自己点検すれば、おのずから次の計画は立てられます。
(新聞「農民」2013.5.6付)
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