TPP問題を聞く
コープみらい副理事長(前さいたまコープ理事長)
佐藤利昭さん
3月に、コープとうきょう、さいたまコープ、ちばコープの3生協が合併して、「生活協同組合コープみらい」が誕生しました。元さいたまコープ理事長で、コープみらい副理事長の佐藤利昭さんにTPPについて聞きました。
JAなど他の団体と連携して
国民的議論を巻き起こしたい
組合員のくらし守る立場から
コープネット事業連合とコープみらいなど会員6生協は、4月15日に理事長連名で「TPP交渉参加に関する要請」を安倍総理あてに送りました。コープみらいは、合併して組合員数約295万人です。社会的な影響力が大きくなった生協として、組合員のくらしを守る立場から、社会的発信力をますます強くしていかなければならないと考えています。今回の要請はその実践です。
この間、TPPについて、報道されていることと実態とはだいぶかけ離れているように思います。とくに農林水産業の問題でいうと、政府は当初、食料自給率が13%になってしまうと試算していました。「自給率を50%にする」という目標からすると、なんらかの方策を打たなければ大きく下がってしまうと心配しています。
いま農村は、TPPに参加するかどうかにかかわりなく、高齢化と耕作放棄地の増大に揺れています。本来は、その解決に本腰を入れなくてはいけないはずです。何よりも東日本大震災で大きな被害を受け、復興と放射能の除染に全力をあげるべきであり、こうしたなかでTPPに参加したらどうなるのか、という不安は払しょくできません。また、地域社会への影響も深刻です。こうした前提のもとにこの要請があるのです。
交渉が秘密裏で情報が流れない
要請項目は、特に組合員の関心が高い、農業・食の安全・共済にしています。
一つは、TPP交渉自体が秘密裏で進められ、情報が伝わってこないことです。これでは国民的な議論などできません。
二つめは、政府は「聖域を守る」と言いますが、アメリカは「すべてが交渉の対象」という立場です。これで国民の利益を守れるのでしょうか。
三つめは、最近の世論調査では、「TPPに賛成」が約6割になりますが、「わからない」も多く、国民の間に戸惑いや不安があるのも事実です。マスコミはTPP参加のメリットを一方的に報道するばかりで、そのことが世論調査の結果につながっているのではないかと考えます。
表に出るのは工業分野ばかり
今後は、交渉の動向を注意深く見守り、明らかに組合員・消費者のくらしを害する場合は、必要な意見表明を行うとともに、JAをはじめ他の団体とも連携しながら、国民的な議論を巻き起こすことも視野に入れたいと思います。
政府は12日、TPP事前交渉に合意しましたが、工業分野ばかりが表に出ていて、食の安全や医療、保険がどうなるのかについて、ほとんど触れられていないと思っています。
アメリカ産牛肉のいっそうの規制緩和も進められようとしています。国民の懸念を解消できないまま進むのであれば、国民は納得しないでしょう。
(新聞「農民」2013.4.29付)
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