「農民」記事データベース20130415-1065-06

丸二年の百姓の俺

八巻 洋一
(福島・桑折町農業を守る会副会長)


あのいまわしい日から丸っと二年
その時
  空気はシーベルトにけがれ
  息するのさえおぞましく
  田畑(でんぱた)はベクレルにまみれ
物をつくる百姓の心は
   絶望にすさんだ
昔から百姓のよしあしは
  おてんとう様がきめて来た
だから不作の時も
  神様がなさることだから…と
「百姓の来年」で
  前を向いて生きて来た

あのいまわしい日から丸っと二年
  俺は七〇になってしまった
  物づくりを生業にして五〇余年
  土があるから
    田畑(でんぱた)があるから
     種をまき
      育て
       収穫し…
人間の食料としてのものを作って来た
しかし、放射能は別ものだ
まだ俺の心はすさんだままだ…
なぁーに 俺はいい
 あと少し、がんばったふりをして
      生きればいいのだから

でも、この日本の生業としての
       百姓はずーっと続く
だから、いかりを失ってはならない
悲しみを忘れてはならない
くやしさを、しまいこんではならない
  土からベクレルを追い出し
  世のなかから原発をなくし
百姓が(ワケなんかどうでもいい)
  おだやかな心で物をつくり
 (貧乏でもいい)
百姓を生業として
    平穏に生きる
そんな百姓としての
   やさしい心をとりもどす斗いの
      小さな力となって
  もう少し生きてみようと
          おもう

(新聞「農民」2013.4.15付)
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2013年4月

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