この人
農民連食品分析センター
小田川遥平さん(28)
先輩から学ぶ、楽しさと責任実感
放射性セシウムやヨウ素を最も精密に測定できるゲルマニウム半導体検出器。原発事故発生後、食品の放射性物質汚染を懸念する声に応えるため、農民連食品分析センターで活躍しています。この器材の操作を主に受け持つのが小田川遥平さん。所員が比較的若い食品分析センターの中でも最年少の28歳です。
「細かい数値まで読み取れるため、異物が混ざったりして間違った数値がでないように細心の注意を払っています」。じっくりと言葉を選びながらも熱く話します。
分析センターで働き始めたのは一昨年の9月、自宅でやっている産直農産物とともに送られてきた人員募集のチラシをみたのがきっかけでした。
「原発ってどうなっているの?」「放射能って何?」「農産物って安全なの?」。メディア報道を通じて疑問と不安が募っているさなか、「自分が食品分析にかかわる仕事につけるのなら」と応募しました。
学習と実地訓練を経て試行錯誤の一年半。「自分には専門知識がないので、先輩たちから毎日学びながらやっています。みんな聞けばなんでも教えてくれるんです。生まれて初めて学ぶ楽しさを実感しています」。話す姿から充実感と責任感が伝わってきます。「多くの人たちの募金で購入した高価な機械を扱わせてもらっているので期待に応えられるようにしないと」
学習の場は分析センターの外にもあります。「一生懸命つくったキャベツが段ボール一箱400円。どうやって生きていけというのか」。宮城や福島などを訪れた際に農家の声を直接聞いて心を痛めました。
放射性物質汚染の検査をしながら、複雑な思いを抱くことも。「放射能は農薬とは違って自分ではコントロールできない。なくて当たり前なのに…」
心がけているのは、農家と消費者をつないで安全な食品を届ける力になること。「自分たちは分析データというたたかうための武器をつくっています。これがみんなの役に立てばいいと願っています」
毎日の出勤は、自分で改造した銀色のカスタム自転車で。たまの休みにお台場などに遠出するときにも活躍しています。
(新聞「農民」2013.4.8付)
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