青年劇場『田畑家の行方』
演出 福山啓子さんに聞く
関連/農業を動かすのは現場の力
農業取り巻く問題を
あらゆる角度から
青年劇場による「田畑家の行方」(山下惣一・中島正共著『市民皆農』から、高橋正圀(まさくに)=作)が4月25日から都内で上演されます。演出の福山啓子さんに見どころなどを聞きました。
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今回の「田畑家の行方」は、青年劇場創立50周年記念公演の第一弾になります。4月25日からの公演に向けて、着々と準備を進めています。出演者自ら農家のところに行って、話をうかがったり、農業について書かれた本を開いたりなど、日々勉強しながら楽しんで稽古をしています。
20代から80代までの幅広い年齢層の俳優が、多士済々で個性豊かな登場人物を演じ、青年劇場の持ち味が発揮されている、おもしろい作品になると思います。
劇のなかでは、登場人物の会話で、今の農業を取り巻く問題があらゆる角度から語られています。舞台は、佐賀県唐津市。すぐ近くに九州電力玄海原発があります。
3・11の東日本大震災と原発事故を経験し、さらにTPPへの参加という現実を前にして、多くの人々は、これから何を選択し、誰とつながっていったらよいのか、真剣に考えています。
作品を通して、「田畑家」=田んぼ・畑・家、つまりこの国の行方をともに考えようと問いかけています。一見、先行き不透明な世の中ですが、人間が生きていく自然のサイクル、つまり農という視点から、日本のこれからを見つめ直すことが大事だと思います。
高橋正圀さんの作品は、こうした難しい問題も、ユーモラスに描いています。棚田が広がる田園風景、昔懐かしい一軒家と、そこに集うユニークな人々。見終わったら、きっと温かく元気な気持ちになれるでしょう。
今回、農家の方はもちろん、農家でない方にもぜひ見てほしい。とくにTPPは、農家だけの問題ではなく、むしろ都市住民の問題だと気づいてほしいですね。
あらすじ
田畑民夫は東京の家電会社で働く営業マン。リストラの嵐が吹き荒れるなか、うつうつとした日々を送っている。ところがある日突然、父の訃報が飛び込んできた。故郷・唐津で民夫と残された家族は「農地をどうするか」という問題に直面した。
そんななか、「残された農地の処遇にお困りではないですか」と現れたのは農業法人「SKファーム」の片桐さつき。田んぼを代わりに耕してくれるというのだ。
家族が賛同するなか、何かが心に引っ掛かった民夫は、少々変わりモノで自給自足の生活をし、村人から“みのむし仙人”と呼ばれている島中老人に会いに行く決意をする。
「都市文明に未来はあっとか? あんたが農地を継げばよか」。迎えた仙人の答えは明快だった。
果たして民夫の選択は!?
お知らせ
青年劇場創立50周年記念第一弾「田畑家の行方」
日時=4月25日(木)〜5月3日(金・祝)
場所=紀伊國屋サザンシアター(JR新宿駅南口徒歩6分、新南口徒歩3分、タカシマヤタイムズスクエア紀伊國屋書店新宿南店7階)
料金=一般5000円、新聞「農民」読者割引4500円、30歳以下3000円。当日各300円増(すべて消費税込み)
申し込み・問い合わせ=青年劇場チケットサービス TEL 03(3352)7200
青年劇場のホームページからも申し込み可
チケットぴあ 0570(02)9999(Pコード427―233)
農業を動かすのは現場の力
「田畑家の行方」プレ企画として青年劇場は3月26日、東京都新宿区の青年劇場スタジオ結で、『市民皆農』著者の山下惣一さん(佐賀県唐津市で農業を営む)によるトークが行われました。聞き手は青年劇場代表の福島明夫さん。
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農について大いに語る山下さん(左)と福島さん |
「農業を動かしてきたのは現場の力」――。こう力強く言い切る山下さんは、前日まで、韓国を訪問し、韓米FTA(自由貿易協定)で農業はどうなったかを視察。学校給食や地産池消に大きな禍根を残すことを告発しました。
日本政府は、「TPP参加で輸出が伸びる」と言いますが、「いいものを輸出すると何を食べるか。結局、外国の安いものになってしまう」と述べ、さらに「輸出というものは安いところから高いところにいくもの。これでは飢餓はなくならない」と語りました。
「企業の農業への参入をどうみるか」については、「企業の寿命は平均40年といわれる。そんなものに土地と農業を任せられるか」と一刀両断。
最後に、農業の大規模化に疑問を投げかけ、「いま必要なのは、安全なものを作って、生産者と消費者がお互いに支え合うこと」だと述べました。
(新聞「農民」2013.4.8付)
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