「すき家」(牛丼チェーン店)に
完全勝利和解
首都圏青年ユニオン
神部(じんぶ)紅(あかい)事務局次長に聞く
賃上げや労働条件の改善は
農家にとっても必要な課題
労働者の賃上げと安定した雇用の確保は、デフレ不況からの脱却のために必要な課題です。同時に、この課題は、農家にとっても大きな意義があります。昨年12月に、非正規労働者など個人加盟の労組、首都圏青年ユニオンは、牛丼チェーン店「すき家」を経営する株式会社ゼンショーに対して、団体交渉に応じ、解決金を支払わせるなどの和解を勝ち取りました。首都圏青年ユニオンの神部紅事務局次長に、その意義について聞きました。
いい仕事する意欲
今回の完全勝利和解の大きな意義は、職場に安全・安心を求めることが、安全・安心な食材を提供することにつながるということです。つまり、食品産業の労働者が低賃金で過酷な労働条件だったら、労働者の意識として「いいものを提供しよう」ということにはならない。職場に安全・安心が徹底されれば、「よりいい仕事をして、よりよい商品をつくろう」と考え始めます。
それを外食産業ナンバーワンの「すき家」で改善させる意義は大きいものがあります。
「ゼンショー」はホームページ上で「世界から飢餓と貧困を撲滅する」ことをうたっています。しかし、言っていることとやっていることは正反対です。深夜の「一人勤務」を常態化させ、残業代の未払い、団体交渉の拒否など、労働者を貧困のどん底に陥れています。これでは安全・安心な食品を提供しようという意欲は起こりません。まさに飢餓と貧困を再生産し、固定化させているのです。
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完全勝利和解を喜ぶ首都圏青年ユニオンの人たち(2月23日)。後列右が神部さん |
賃金が低ければ
これは「すき家」に限ったことではありません。劣悪な労働条件を押しつけるブラック企業で働く若者、大学に行っても奨学金を返せず借金漬けになる学生など、貧困が複合的な問題になっています。
労働者にとって、賃金が低ければ、農家が自信をもってつくったおいしい国産農産物を口にしたくても口にできないという矛盾に突き当たります。ここを変えていかなければ、自分たちの命と健康を守ることはできません。
農家の生活支える
いま、社会全体の底上げが必要です。労働者と農家という枠を超えて、お互いが手を携えた運動が求められています。
非正規労働者の賃金アップは正規労働者の賃上げにつながり、それは、農林漁業など1次産業で働く人々の生活向上にもつながっていきます。
農家にとっても、個々の努力は大切ですが、国や自治体に公的支援を求め、農業全体を豊かにしていくことが大事だと思います。農産物に価格保障をして、農家の生活を支えることは、労働者にとっても必要なことです。国は「低米価のなかで、米農家は安い労賃で米づくりをしている。労働者もがんばれ」と競争と分断を持ち込みます。
農民連とも懇談を
今後の外食産業に対するたたかいとして、労働条件の改善を求める運動とともに、労働者による「国産の農産物を使え」という要求と、農家による「おれたちのつくった農産物を使え」という要求とを合わせた、たたかいもぜひやってみたいと考えています。
農民連青年部のみなさんとも定期的な懇談を行い、一緒に社会を変える運動に取り組んでいきたいと思います。
(新聞「農民」2013.4.8付)
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