リンゴ農家・松川峯子さん(69)の
支援感謝のメッセージ
福島
福島県北農民連の直売所「産直カフェ」に出荷しているリンゴ農家、松川峯子さん(69)=福島市=から、産直カフェに届いたメッセージを紹介します。
大好きな福島で以前のように
リンゴを作り続けたいのです
ただただ悔しい
ご支援ありがとうございます。
決してあってはならない原発事故からもう2年が過ぎようとしていますが、「ただただ悔しい」の一言に尽きます。
私事ですが、今から23年前、借金をしてヨーロッパ旅行に出かけました。そのとき、なんと一行全員に「ノーモア広島、ノーモア長崎」の署名用紙が10枚ずつ配られました。「帰国するまで全部埋め尽くすように」との話に、ろくに英語を話せない私は、「どうせできるわけない」と思っていました。
冷や汗をかきながら、なんとか現地の一人の人に署名していただいたとき、「なんだ、やれば何とかなるんだ」と少しうれしくなりました。
実は、私の訴え方がよかったのではなく、広島、長崎の悲惨さを他国の人たちはしっかりと受け止め、そうあってはならないと思っているからこそ署名してくれたのです。そして、まさかまさかの原発事故。「ノーモア福島」になるなんて、一行の誰もが予測しなかったことでしょう。
電話にお辞儀を
とにかく除染をしようということで、業者に依頼し、あの深い雪のなかを何日もかけて作業していただきました。
私はその後、不十分なところを粗皮(そひ)削(けずり)を使って、樹木の表皮をはがしました。ひざ上まである雪のなかを、風が吹こうが、雪が降ろうが、毎日毎日懸命に取り組みました。はがしたものを集める仕事も大変な時間がかかりました。
そのうち身体と心の疲れが重なり、自動車事故を起こす人や、病気になって入院する人も出てきました。「除染」は漢字で書けばたったの二文字ですが、いざ作業をしてみると命がけといっていいほどのものなのです。
除染のおかげか、木が放射性物質をあまり吸わないのか、うちで作っている桃、梨、リンゴは検査の結果、ND(検出されず)でした。
ところが、「まぼろしの福島のリンゴ」といわれた「ふじ」も検査結果がNDであっても、安値で買いたたかれてしまうのです。どこの家でも、原発事故前より丁寧に、より慎重に作業をし、少しでもよいものを生産しようとがんばっているのに…。
でも、周りから「福島を応援しようと注文がきたよ」と言われたときは、本当にありがたくて、思わず電話にお辞儀をしてしまいました。
ご支援をさらに
私たちはこの大好きな福島の地で、果物を作り続け、とびっきりの笑顔で走り回る子どもたちの声を聞きながら、生活したいのです。今後も、よかれと思うことは、積極的に取り入れ、元の生活に近づけるよう努力していくつもりです。
引き続き、ご支援をよろしくお願いします。
(新聞「農民」2013.3.18付)
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