「農民」記事データベース20130311-1060-01

3・11大震災から2年

宮城・東松島市
注目されるガレキ処理

ガレキは財産
人の手で丁寧に

関連/東北のおっ母は強いよ〜


ムダ少なく再利用97%
処理コスト大幅ダウン
雇用が新たに900人にも

 働けるだけでもありがたいちゃ

 ガレキの山を崩して薄く広げた現場では、防じんマスクにヘルメット姿の40人ほどの作業員が横一列に並び、「石」「プラスチック」「木片」などを手で選別し、専用のカゴへ入れながら、前へと進みます。

 折りたたみいすや車のついたいすに座ったままの姿勢で、しかも鉄板の上での作業。きびしい寒さだけでなく夏の暑さも思いやられます。

 しかし、大友貞夫さんは「津波ですべてをなくした。仕事があるだけでも助かる」といい、妻の昭子さんは「ガレキの中から子どもの靴や腕時計などが出てくると、胸がつまるの。助かってこうやって働けるだけでもありがたいっちゃ」「ガレキといっても大事な財産だったもの。ムダなものなんかないよ」と言いながら、ていねいにすばやく作業をしています。

 それぞれのかごがいっぱいになると別の作業員がダンプに運び、ダンプは専用置き場へと走る。その流れは実にスムーズです。

 大友部長の説明によれば、東松島市は津波で市街地の65%が浸水し、死者・行方不明者1131人、全壊・大規模半壊8553棟、発生したガレキは通常の156年分と言います。市は過去の教訓から、すべてのガレキを収集から仮置き場への搬入まで木材、金属、家電など14品目に分別を徹底しました。

 ガレキはヘドロを処理した上で、人の手でさらに細かく選別し、木材は破砕して合板や燃料に、コンクリート類は破砕して再生骨材に、土砂やヘドロも雨水を利用して塩分と不純物を取り除いて再生土として活用するという徹底ぶりで、地域外に売却した金属類などを除けばすべて市内で再利用し、リサイクル率は97%に達するといいます。

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手作業でガレキ処理(東松島市提供)
大友昭子さん

 地域が活性化しはじめて復興に

 ガレキ処理費もトン当たり9600円と予算を大幅に下回り、他の自治体と比べても「2〜10分の1のコスト」。震災復興予算の流用や不正使用、大手業者への丸投げなどが問題とされるなか、東松島市の取り組みは注目に値します。

 大友部長は「巨大津波の直後から救援や復旧、遺体の仮埋葬、そしてガレキ処理と、市建設業協会(51社で構成)が大きな役割を果たした。ガレキも有効活用を協会と一緒に取り組んだ。雇用の面でもガレキ処理に1500人が従事しているが、うち900人は新たな雇用で、日当も8000円が支払われている」と話します。

 市建設業協会の橋本会長は「ムダなくすべてを地元へ、と地域循環型で進めた。この先が大事だ。地域が活性化し、雇用が確保されて初めて復興といえる」と話します。

 ガレキ処理は1年後には終了の見通しで、雇用の継続が大きな課題です。長谷川市議は議会でその対策を求め、市も建設業協会はじめ市内の業者に雇い入れを要請しているとのことです。


負けない!仲間と支え合って

東北のおっ母は強いよ〜

 大友夫妻は父親を介護施設に預けていますが、利用料の減免が4月以降未定なうえ、仮設から災害公営住宅に移れば家賃負担もあり、「仕事がなくなればお先は真っ暗」と深刻な表情。一方で、「大震災でたくさん失ったけど仲間も大勢できて支えあってきた。農民連もついている。負けないよ〜。東北のおっ母は強いよ〜」と昭子さん。

 安倍内閣は大型公共事業を中心に13兆円もの補正予算を組みましたが、被災者が元の暮らしとなりわいを取り戻せるよう被災地に身を寄せた復興対策こそ行うべきです。

(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)

(新聞「農民」2013.3.11付)
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2013年3月

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