TPP交渉参加決断は許されない
2013年2月23日
農民運動全国連合会会長 白石 淳一
一、安倍首相はオバマ大統領との首脳会談を通じて、TPP交渉参加に踏み出す意向を表明した。農業・医療・建設・消費者・法曹など国民の多数がTPP交渉参加に反対し、地方自治体議会の9割以上が反対・慎重の決議をあげているにもかかわらず、それらを押し切って日米首脳会談の場で交渉参加に踏み出すなどという暴挙を絶対に許すわけにはいかない。
一、発表された「日米TPP共同声明」なる文書では、冒頭に「すべての物品が交渉の対象とされる」と明記され、TPP交渉参加国が確認している「TPPのアウトライン」にもとづく協定を達成することを確認している。「TPPのアウトライン」は「関税ならびに物品・サービスの貿易および投資その他の障壁を撤廃する」ことを明記しているのであり、「アウトラインの達成」とは、関税と非関税障壁の「聖域なき」撤廃にほかならない。
一、共同声明は「特定の農産物」の「重要性」(センシティビティ)に言及し、「一方的にすべての関税を撤廃するよう事前に約束することを求められるものではない」としている。安倍首相は、これを根拠に「TPPでは聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」と述べている。しかし、これは、重要品目を例外扱いにすることを認めたものでは毛頭なく、“交渉の中で言うだけは言ってみる”ことを認めた程度のものにすぎない。
一、もともと自民党が総選挙で国民に公約したのは(1)「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対、(2)自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、(3)国民皆保険制度を守る、(4)食の安全安心の基準を守る、(5)ISD条項は合意しない、(6)政府調達・金融サービス等はわが国の特性を踏まえる――の6項目であった。第1の関税撤廃問題も空手形になる可能性が高いが、他の5項目については安倍首相が一方的に説明しただけで終わっている。しかも共同声明は、自動車や保険を含む非関税障壁の撤廃でアメリカが圧力をかける余地を残しているのである。
農業だけではなく、医療、食の安全、地域経済、経済主権に重大な打撃となるTPP交渉参加に踏み切るのは、重大な公約裏切りであり、安倍自公政権が数の力で暴走するなら、民主党政権同様、国民との矛盾を広げ、早晩破たんすることは避けられない。農民連はTPP反対の一点での共同をさらに強め、TPP参加阻止の運動の先頭に立つ。
一、日米首脳会談では、TPPのほか、沖縄の新基地建設、集団的自衛権の行使、原発再稼働を約束するなど、日本国民の民意に背く異常な対米追随ぶりが浮き彫りになった。農民連は、TPP参加反対、原発即時ゼロ、普天間基地の無条件撤去、憲法改悪反対など、一致する要求にもとづく広範な国民の運動の一翼を担って奮闘する。
(新聞「農民」2013.3.4付)
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