原発に「ふるさと」を奪われて
福島・飯舘村の酪農家
長谷川健一さんが写真展
関連/自然再生エネルギーの活用 地域に経済効果もたらす
「3・11」後を撮り続けた記録
「写真集」も発行
福島県飯舘村の酪農家、長谷川健一さんの写真展が、1月11日から14日まで、東京・新宿の全労済ホールで開かれました(写真下)。写真展にあわせて「写真集」(七つ森書館、定価1000円+税)も発行され、被災当時の破壊された生活や、仮設住宅・避難所での暮らし、苦闘する除染活動、そして未来に向けた活動など48枚の写真が展示されました。また12日には、「原発に『ふるさと』を奪われて」と題して長谷川さんが講演しました。
2011年3月11日の大震災、そして福島第一原発の爆発で村が放射能に汚染された飯舘村。長谷川さんは息子さんと牛やイノシシを飼い、地区の区長も務めていました。被災後は、区長として住民の被ばく回避に全力を尽くし、飯舘村の映像を記録し続けてきました。
長谷川さんは講演の中で「この写真はただの思い出のためではなく、将来、村や県、国がどのような対応をし、それに対して村人は何を考えて、どういう行動をしたのかを検証するためであり、記録を撮り続けることが私の使命」と述べました。また長谷川さんは、「何いってんだ!」を連発して、被災後の行政や東電、御用学者の対応を厳しく批判しました。
郡山市から2人の子どもと都内に避難している30代の女性は、「つらいことはいっぱいあるし、話していると涙も出るけど、福島を風化させてはいけない、忘れてはいけない。そのことをもっともっと多くの人たちに伝えていかなければと、長谷川さんの写真を見てあらためて思いました」と話していました。
自然再生エネルギーの活用
地域に経済効果もたらす
自然エネルギー研究センター 大友代表が講演
農民連も団体加盟している「原発をなくす全国連絡会」は1月15日、連鎖学習会の第3弾として「自然再生エネルギーへの転換は可能か」をテーマにした学習会を開き、24団体から44人が参加しました。
自然エネルギー研究センター代表の大友詔雄(のりお)さんが講演しました。大友さんは、砂漠で太陽熱や風力を使って発電し、その電力を消費地に送電するという「デザーテック構想」が、北アフリカとヨーロッパの間などで推進されているなど、世界の自然エネルギーの最新動向を紹介。
また、木質バイオマスの活用によって人口4000人の町に1100件もの新たな雇用が生まれたドイツ・ギュッシング市や、北海道芦別市の事例などを紹介しながら、自然エネルギーの活用が地域内に高い経済効果と雇用創出をもたらすことを説明しました。
会場から、「自然エネルギー普及に、もっとも求められる政策は何か」との質問が出され、大友さんは「それは原発をなくすという政策です。エネルギーの特質上、自然エネルギーは原発の存続と相いれないのです」と答えました。
実践報告として、福島県農民連事務局の佐々木健洋さんが「エネルギー自立の運動は農村から始まる」と題して、報告を行いました。佐々木さんは、農村では今後ますます人口減少がすすみ、地域の保全をどうしていくかが大問題になると指摘。「しかし、農村には豊富な地域資源があり、自然エネルギーの活用や省エネ対策などの推進で、地域経済を活性化できる」と述べ、福島県農民連が伊達市や相馬市、二本松市などで取り組んでいる太陽光発電の取り組みを報告しました。
(新聞「農民」2013.2.4付)
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