「農民」記事データベース20130204-1055-06

個人の要求でも取り上げ成果
村になくてはならない農民連

長野・栄村元村長 高橋 彦芳さん


画像 私のふるさと栄村は、長野県の最北部にある山間地の豪雪地帯です。2011年3月12日未明、東日本大震災から13時間13分後、震度6強の地震に見舞われ、甚大な被害を受けました。過疎・高齢化の村で困難をきわめましたが、農民連はじめ全国からの支援・激励で復興に取り組んでいます。心から感謝します。

 暮らしや生業など村内外の問題が直面するなか、昨年5月23日、あらためて農民組合を結成しました。私は顧問として名を連ねています。

 栄村には過去に輝かしい農民組合の歴史がありました。1962年2月14日、43人が集まって農民組合を結成しました。そしてその日に、飯山線の貨物駅集約化反対の特別決議をあげました。青年たちは、自分たちの力でたたかいとるしかないと自覚したのです。

 私は当時、公民館の主事として、農民組合をバックアップしようと決意しました。それは、戦後制定された教育基本法の理念は、住民の実生活に即した社会における住民の自己教育にあったので、社会教育をまかされた職員として、当然の責務だと思いました。

 農民組合は、定期的な学習や会議を持ち、農業だけでなく村内のさまざまな問題を取り上げ、一人の問題であってもみんなで取り組み、住民との連携を深めることを作風としました。だれでも参加できる公開の村当局との交渉は、実に圧巻でした。このなかでは、除雪作業に賃金を支払うことや機械除雪の促進、冬季間使えない車両の減免、出稼ぎ対策など雪国ならではの要求や、安心してお産のできる母子センターの整備、国保税値上げ反対、へき地への教員配置、映りの悪いテレビの受信料を減免することなど、福祉・教育の問題も成果が出るまでねばり強く交渉しました。また、米価闘争や平和運動にも取り組みました。

 その結果、たよりになる農民組合と評判になり、5年後には100人を超える組合員になり、全日農から優秀組合として表彰されました。

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新たに結成された栄村農民組合の仲間たち(2012年5月23日)

 1970年代になって、農民組合の幹部が農協や森林組合など村の要職の幹部になり、そのあと若者が続かなかったことなどから活動が先細りしました。しかし、村政の民主化は途絶えることなく続きました。私は農民組合の仲間から推薦を受け、1988年から5期20年にわたって「実践的住民自治」を掲げて住民と苦楽をともにし、棚田整備の「田直し事業」や「下駄(げた)ばきヘルパー」など小さくても輝く村政に取り組んできました。これらは、かつて仲間と鍛えあった成果です。

 あらたに結成された農民組合には、これまでの「一人の問題でもみんなで取り組む」という伝統を受け継いで活動することを期待しています。

 農民組合は、地域になくてはならない組織だと確信しています。みなさんがそれぞれの地域で組織を立ち上げ、拡大し、地域の主役として奮闘されんことを心から願っています。

(新聞「農民」2013.2.4付)
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2013年2月

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