今年も挑戦 農業青年
関連/農民連青年部第21回総会
完全有機栽培をいま模索中
試行錯誤の連続でも魅力感じ
千葉・印西市
諸井盛侑(しげゆき)さん(23)=米・ミツバ
千葉県印西市の田んぼ4ヘクタールで米作り、ハウス10アールでミツバの水耕栽培に、祖母、母ら家族で励んでいます。
小さいころから継ごうと思った
とくにミツバは、おせち料理や雑煮、鍋物に大人気。「最も需要の多い年末年始が勝負どころ」と、諸井さんの農作業の手は休むところを知りません。ハウスの管理にも細心の注意を払う時期です。
「小さいことから、いずれは農業を継ごうと思っていた」と諸井さん。高校卒業後、大学に進学しましたが、その半年後に転機が訪れます。やむにやまれぬ家庭の事情で、急きょ、大学を中退し、就農することになりました。
対面販売を経験やりがい味わう
米は有機無農薬で、酒米にも挑戦しています。ミツバは化学肥料に頼らず、水に有機物を溶かした液肥を試すなど、試行錯誤の連続ですが、「ゆくゆくは完全有機栽培にシフトしていきたい」と前を向きます。
直売所のイベントで対面販売を経験。「自分でつくったものを自分で売った」ことで、農業へのやりがいと充実感を味わいました。
一方で、農業ならではの難しさも。ハウス栽培のため、天候には左右されないと思われがちですが、「印旛沼が近く、湿気やカビは天敵です。また、風の強い日は要注意です」。資材や重油代の負担も重くのしかかります。
ほかの農家との交流を大事に
23歳を迎え、同年代の人たちも就職する時期。農家としてすでに歩み出している自分を改めて見つめ直している諸井さん。「ほかの仕事を経験したことがないので、他の職業と比べてどうだということは言えませんが、休みを自分で決められるなどの良さもあります」。苦労して作り出したわずかな余暇を趣味のバイクやカメラにあてています。
千葉県農民連の小倉毅事務局長の紹介で農民連の会員に。「ほかの農家との交流や人のつながりを大事にしたい」と期待を寄せます。
昨年は農民連関東ブロック交流会(群馬)に参加し、今後は青年部の活動にも携わっていく予定です。
将来は、ミツバの完全有機栽培への挑戦とともに、太陽光や風力を活用した、環境に優しく安価な発電、温度管理を追求します。「有機栽培は、完成するまでに10年単位かもしれませんが、自信をもって農産物を出荷できるようにしたい」。一歩一歩着実に歩を進めています。
じいちゃんの願い聞き農業継ぐ
会社で味わえない“ものづくり”実感
福岡・宮若市
小畠有生(ゆう)さん(26)=米・野菜
農家の一番の悩みは、後継者がいないことです。農業は3Kと言われ、「きつい、汚い、苦しい」職業。75歳になる小畠一之さんは、自動車免許の更新も危ぶまれ、跡取りの長男は会社勤めとなり、「自分が百姓をできなくなれば、代々の田畑は人にまかすしかない」と思っていました。
しかし何とか跡を継いでもらいたいと、3年前、目を付けたのがまだ遊びたい盛りの茶髪の孫、有生くん(当時23歳)でした。
いま、有生くんは一之じいちゃんの願いにこたえて、農業を継いでがんばっています。
育てている時は夢がふくらむ
有生くんは「農業のだいご味は、なんといっても“ものをつくる”ということです。汗をかいて土を耕し、作物を育てている時は、『いっぱい売れるかな〜』とか夢もふくらみます。しかし自然にも左右され、台風や大雨の時は涙目です。でも、会社勤めでは味わえない作物の成長と実りを実感することができます。やればやるだけのものが返ってくるのも魅力の一つです。今のところ、最大の悩みは一之じいちゃんかな。じいちゃんは農業一筋のガンコ者。これからも自然と向き合い、ガンコな一之じいちゃんと競い合い、おいしいお米や野菜を作っていきます」と、抱負を述べました。
ポン菓子機の使い方伝授され
また有生くんは、一之じいちゃんにポン菓子機の使い方を伝授してもらい、稲刈り交流会やイベントで大活躍。このポン菓子機は、壊れて農協の倉庫に放置されていたものを一之さんが修理して復活させ、若宮農民組合の所有物となったもの。
有生くんは、テーブルやガスコンロのいっさいを軽トラに積んで会場に乗り込みます。まつり会場で、民謡や踊りの最中に元気よく「バーン!」。気持ちよく歌っている人も苦笑い。ポン菓子の難しさは、圧力が上がり「今だ!」という絶妙のタイミングだそうです。口金(くちがね)を思いっきりたたくと、ポン菓子機から一気にふくらんだお米がはじけ出ます。「次の出番までもっと腕を磨いておきます」と、有生くんは笑って話しました。
(福岡・若宮農民組合 藤嶋嘉子)
農民連青年部第21回総会 |
○2月9日(土)午後1時〜10日(日)
○藤の瀬会館(静岡県藤枝市本郷876)
○参加費 9000円
問い合わせ・申し込み=農民連本部青年部 |
(新聞「農民」2013.1.14付)
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