「農民」記事データベース20121224-1051-10

旬の味


 この1年ももう終わりかと、黒い手帳をパラパラと眺める▼9月、友人が乳がんの手術を受けた。放射線治療が始まって髪の毛を落とし、夏から秋、そして初冬の日々の中で、その不安や恐れ、そして「恋に泣いた」ことなどをてらいなく語ってくれた。無事に手術は終わったが「人格をも壊す」術後の治療が待っていた。そんな友人に杉山平一さんの「希望」という詩を届けた▼夕ぐれはしずかに/おそってくるのに/不幸や悲しみの/事件は/列車や電車の/トンネルのように/とつぜん不意に/自分たちを/闇のなかに放り込んでしまうが/我慢していればよいのだ/一点/小さな銀貨のような光が/みるみるぐんぐん/拡(ひろ)がって迎えにくる筈(はず)だ/負けるな▼友人は「この詩に励まされた」と話してくれた。それが回復の証(あかし)なのだろう。「打ち克(か)て」ではなく「負けるな」という手渡す人の思いに包まれて、「希望」という名の「小さな銀貨のような光」がまたやってくるはずだ。世の不正、理不尽にもまた。

(あ)

(新聞「農民」2012.12.24付)
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2012年12月

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