「農民」記事データベース20121224-1051-01

ニュージーランドで第15回拡大交渉会合

TPP

現地リポート
全労連国際部長 布施 恵輔さん

関連/交渉反対市民集会で寸劇
  /休刊のお知らせと新年号のお届け

 TPPの第15回拡大交渉会合が、12月3日から12日までニュージーランド・オークランドで開かれました。今回から、カナダとメキシコも正式参加し11カ国で協議。全労連の布施恵輔国際部長が、現地で市民団体や労働組合などの集会に参加し、情報収集にあたりました。布施さんのリポートをお届けします。


今回が新たな提案できる最後
崩れた“交渉参加で国益主張を”

 市民団体の集会や労組のロビー活動に

画像 私はこの交渉にあわせて行われた市民団体の集会や、各国の労働組合の代表とともにロビー活動などに参加しました。

 11カ国の交渉団は総勢550人で、登録した利害関係者は約200組織・280人にものぼりました。今年5月のアメリカ・ダラスでの交渉同様、企業や業界関係者の登録が過半数でした。

 交渉の全体像はまだ明らかになっていませんが、ISD条項(企業や投資家が不利益を理由に相手国を国際裁判所に訴えることができる)にオーストラリアが抵抗していることや、アメリカによる知的財産権の提案など、決着に向けていくつかの障害が明確になっています。近いうちに、事務局が首席交渉官レベルでの調整を行うのではないかというのが、大方の認識でした。首席交渉官レベルで決着しなければ、当然“政治決着”ということになります。

 国民の目を恐れた秘密裏の交渉で

 また、今回の会合が事実上、「新たな提案のできる最後の会合だ」ということも聞きました。つまり、もうかなりの部分でまとめのプロセスに入っており、日本の政治家の一部が「交渉に参加し国益を主張すればいい」という論理はまったく成り立たないということです。

 交渉は相変わらずの秘密主義で、会場のスカイシティー・コンベンションセンターへのアクセスは大変厳しく制限されていました。また、利害関係者のための便宜も不当に制限され、交渉団へのプレゼンテーションも1人15分で質疑はなし。国民の目を恐れ、秘密裏に交渉していることの不当性を多くの仲間が批判していました。

 さまざまな要求かかげ集会や会場向けデモ

 12月8日の土曜日には、約500人がオークランド中心街の公園で集会を行い、交渉が行われている会場までデモ行進しました。「交渉を公開せよ」「民主主義と主権を守れ」などさまざまな要求を掲げながら市民に訴えました。国際的に取り組まれているAVAAZ(アメリカに本部を置くNGO組織、グローバル・オンライン・コミュニティ)の「交渉の公開を求める」ネット署名数は72万5000を超えています。

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“密室談合するな!”とデモ行進する市民団体(オークランド=12月8日)

 この日の行動では、日本に何度も来日しているオークランド大学教授のジェーン・ケルシーさんとアメリカ・パブリックシチズンのロリ・ワラックさんが、ニュージーランドの交渉団副代表に署名を手渡しました。

 広い国際的な連帯で参加表明を必ず阻止

 「交渉は2013年10月までに合意」ということを、何人かの交渉官から聞きました。次回の会合は、来年3月上旬にシンガポールで開かれる予定です。

 各国の仲間からは、相変わらず日本のTPP参加反対の運動への期待が高いです。今後も、幅広い国民的な共同と国際的な連帯で、TPPの危険性を広く知らせ、日本政府の参加表明を阻止していくことがいっそう重要だと痛感しました。

(12月11日記)


ボクシングのリング設営

交渉反対市民集会で寸劇

危険性を暴かれ
最後は会場の応援で
アメリカをKO!!

 ウェリントンの中心街、国会の近くで4日の昼に、TPP交渉反対の市民集会が行われました。ビルの前のちょっとした広場が会場なのですが、いきなりボクシングのリングが設営されていたのでびっくりしました。

 何かと思えば、星条旗のシャツを着たアメリカの多国籍企業をイメージした大柄の男性(アンクルサム)と、ニュージーランドをイメージした小柄な男性が3ラウンドのボクシングをしました。最初、ニュージーランドの男性は交渉の秘密性を批判するため目隠しをしていて、アンクルサムにしたたかに打ちのめされます。次のラウンドも関税撤廃やISD条項などTPPの危険性が暴かれ、最後に会場の応援でようやくアンクルサムをノックダウンするという筋書きで、なかなかでした。

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ニュージーランドの地元新聞「ザ・ドミニオン・ポスト」(12月4日付)から

 その後、労働組合の人やビクトリア大学の教授、看護師協会の代表、環境NGOの人が次々にあいさつしました。また、この日の地元新聞には、ジェーン・ケルシーさんのインタビューが2面に出ていましたが、なかなかの扱いでした。


休刊のお知らせと新年号のお届け

 次号の12月31日付は休刊します。

 1月7日付新年号は一週間早くお届けします。新年は、1月14日号から通常の発行となります。

(新聞「農民」編集部)

(新聞「農民」2012.12.24付)
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2012年12月

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