「農民」記事データベース20121119-1046-12

旬の味


 立冬を迎え、強い霜も何度か降りたので、野菜も本格的に味がのってきた。寒さによってハクサイやホウレンソウの甘味が増すのは、凍るまいとして体内の糖濃度を高める仕組みが働くためだ▼秋冬野菜は身体を温めると言われるが、有効成分が特定されているものは少ない。多くの人が体感できる感覚として、この時期にトマトを食べると身体が冷えるが、ハクサイの漬け物でご飯を食べても冷える感じは受けない▼野菜から摂取される糖分やカロテンなどの栄養素に注目すれば、トマトの方が多いと思われるが、やはり旬の物を食べた方が身体になじむ。この感覚は正しいだろう。成分が特定されている場合に限って、科学的ともてはやされる向きが世の中にある▼しかし、食文化として根付き多くの人が実感している感覚の多くは、複合成分や食べる人間の生理状態との関係で成り立っており、特定物質を見つけることはできないだろう。旬の食べ物は、その季節を生き抜いた命を丸ごといただいてこそ意味があるのだ。

(綿)

(新聞「農民」2012.11.19付)
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2012年11月

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