「農民」記事データベース20121119-1046-03

厚労省

輸入牛肉緩和、手続き開始

委員から疑問、“慎重に”の声続出

関連/とんでもない答申 米国産輸入NO!


 BSE対策

 BSE対策の緩和を了承した内閣府・食品安全委員会の答申(評価書)を受けて、厚生労働省は11月6日、薬事・食品衛生審議会を開き、緩和に向けた手続きに入ることを決定しました。

 同審議会ではまず、事務局がこれまでの経緯と、今後の日程などについて説明。今回、輸入規制が緩和されるアメリカを含む4カ国には、すでに答申内容を通知してあり、現在は具体的な輸入条件を決める二国間協議に向けて、各国からの提案を待っている状態であることを報告しました。

 委員からは、「食品安全委員会でのパブリックコメントの結果を見ると、万全の安全対策を求める声が圧倒的多数を占めており、国民の不安は非常に大きい。緩和にあたっては、慎重の上にも慎重を期すべきだ」、「リスク管理機関である厚労省・農水省の責任はきわめて重いが、飼料規制の実態などを確認するなど、その責任体制がぼやけている」といった意見や、「食品安全委員会の答申は、飼料規制が有効に機能していることを前提にして、緩和を容認している。しかし、飼料規制をどう確実に担保していくのか、議論が不十分ではないか」など、慎重な対応を求める声が続出しました。


院内集会

とんでもない答申
米国産輸入NO!

非定型BSEの解明不十分
答申の撤回求める

 日本消費者連盟と食の安全・監視市民委員会は7日、参議院議員会館で「アメリカ産牛肉輸入にNO!〜食品安全委員会のBSE評価書はとんでもない」をテーマに院内集会を開きました。

画像 元食品安全委員会プリオン専門調査会委員で、全頭検査など日本のBSE対策の確立に尽力した山内一也東京大学名誉教授が講演。従来型と違うBSEで、緩和を巡る議論のなかでも焦点となっている非定型BSEについて、山内さんは、(1)飼料を介した感染が考えられ、飼料規制が必要、(2)実験研究で生物種を超えた感染性が確認されており、欧州食品安全庁は人への感染の可能性も指摘している、(3)答申では「非定型BSEは高齢牛で発生し、日本で発生した23カ月齢の若い牛の感染性は認められなかった」と片付けているが、残されたサンプルがえんずい1カ所しかないなかで、感染性なしとしている。別の部位では感染性があるかもしれない、などと指摘し、規制緩和を容認した答申(評価書)に疑問を呈しました。

 また、評価書の撤回を求めた公開質問状と再質問状の内容を、日消連共同代表の山浦康明さんが紹介しました。山浦さんは、「アメリカで飼料規制が強化されたというが、実態調査に基づいていない」「非定型BSEについて、科学的解明が不十分であるにもかかわらず、リスクを軽視している」「アメリカ産牛肉の輸入では違反事例が相次いでいる実態を無視した形式的評価であり、農水省や厚労省などの管理部門に責任を押し付けている」などの疑問点をただしました。

 飼料規制の実態調査せよ

 食品安全委員会と厚労省の担当者が出席し、それぞれ回答しましたが、答申(評価書)の内容を一歩も出ない答弁を繰り返し、会場からは異論が噴出。「アメリカでは飼料規制が守られていない実態があちこちから指摘されている。リスク評価機関として実態調査をするべき」、「アメリカでのBSE検査の頭数もまったく不十分だ」などの声が起こりました。

 また、山内さんも「評価書は各国の研究報告を羅列しているだけで、問題点がどこにあるかが、わからない。日本のリスク評価機関としてそれらの研究結果をどう評価しているのかがないまま、(リスクは無視できるとした)結果だけが示されている」と批判しました。

(新聞「農民」2012.11.19付)
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2012年11月

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