「農民」記事データベース20121112-1045-01

あんぽ柿農家
今年も出荷自粛

福島県北農民連が東電交渉


育てては捨てている
農家の気持ちわかるか

 「柿を育てては捨ててるんだ。農家の気持ちがわかるか! おれたちは安心して作りたいんだよ」―福島県北農民連は10月25日、伊達市保原町であんぽ柿農家を中心とした東京電力との交渉を行い、約50人が参加しました。マスコミも取材に駆けつけ、夕方のニュースでいっせいに報道されました。

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マスコミも殺到した東電交渉

 あんぽ柿農家は、昨年冬から高圧洗浄機を使って冷たい水を全身に浴び、柿の木を洗浄するなど「除染」に全力を注いできました。しかし、福島県が試験的に検査した結果、1キログラムあたり100ベクレルの放射性セシウム基準を超えるものが、56検体中20検体も出たことから、2年連続で出荷自粛となりました。

 こうした事態をうけて行われたこの日の東電交渉では、9月の本社交渉でも要求した「果樹等の品目転換に対して、5年分以上の賠償金を支払うこと」に対して、東電側は今回も「品目転換にかかる費用については、その必要性合理性について現時点では事故との『相当因果関係』が確認できず、損害賠償の対象とはならない」とまったく同じ回答でした。

補償請求拒否 不誠実な東電

 まき散らした放射能持っていってくれ

 生産者 育てては捨てることをいつまでも続けろというのか。何年もかけて育てたあんぽ柿を切ってまで、ほかの作物に転換して安心して農業を続けたいんだ。

 東電 放射線量が下がり、あんぽ柿が作れる可能性もある。

 生産者 本当に来年には放射能が出ないと保証できるのか。東電のみなさん、畑貸すから作ってみてくれ。東電がまき散らした放射能を全部持っていってくれ。

 東電 相当因果関係が…。

 生産者 今後、「相当因果関係」という言葉を使うな。なぜダメなのか具体的に説明してくれ。

 東電本社と協議する。

 これから安心して農業できる補償しろ

 生産者 イチゴのかん水を川の水でやっていたが、不安なので井戸を掘って地下水に切りかえた。放射能が出たなんて言われたら、もうイチゴは作れない。地下水に代えた費用をなぜ補償できないのか。その理由がどうしてもわからない。

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東電に「安心して作らせろ」と訴える生産者

 東電 国から河川の水を自粛するようにという指示はでていない。個々の事案を検討して、「相当因果関係」が証明できるのであれば。

 生産者 サクランボなどの被覆資材は放射能で汚染されており、そのまま使用すれば雨や風で園地を汚染することになる。取り換えは原発事故がなければ必要のないことだ。なぜ補償できないのか。

 東電 個別に事情を確認させていただきたい。

 生産者 交通事故で車もダメになった、ケガで働けなくなった。そういう場合、遺失利益は休業補償でもらい、車も元通りに直すのが当たり前だろう。おれたちは、遺失利益部分の一部はもらったかもしれないが、財産である農地は原状回復がされていない。元通りにできないのなら、補償するのが当たり前だろ。

政府は損害賠償の
責任果たしていない

 東電は、文科省の原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」を持ち出し、「『相当因果関係』が認められない」という理由で補償の支払いを拒否する姿勢を続けています。東電にはいまや、事故の加害者という立場はまったくみられません。これを許しているのが政府です。被害の「補償」にとどまらず、これからの「未来」への補償が必要です。その責任を果たすのが政府ではないでしょうか。私たちは政府・国の責任を絶対に逃がさない。
(福島県北農民連 服部 崇)

(新聞「農民」2012.11.12付)
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2012年11月

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