「農民」記事データベース20121105-1044-10

旬の味


 岩手・陸前高田市の海岸に、大震災・大津波から一本だけ生き残った「奇跡の一本松」があり、被災地を鼓舞激励するがごとく立っていた。塩害によってやむなく伐採され、多くの人たちが別れを惜しんだ▼同じようなことがこの地域にもあった。大江山の鬼退治で有名な源頼光一行が、三岳山のふもとで持ってきた杖(つえ)を置き忘れた。この杖が芽をふき大木となり、永く神木として村人から尊ばれてきた。ところがこの一本松も、台風などで老朽化し、1959年、惜しまれながら伐採された▼樹齢360年余、高さおよそ30メートル、幹まわり6メートルにも及んだという。地上5メートルほどのところで5本に分かれ、鬱蒼(うっそう)と生い茂っていた。村人はその木の種で二世を育てるとともに、切られた杉の木を分け合い、火鉢やおぼんなどに加工し、今でも大切に使っている▼伐採時の写真を部屋に掲げて偲(しの)んでいるが、陸前高田の一本松と同じように、いまも過疎の村に勇気を与えている。高田松原の美観がよみがえる日を念じてやまない。

(力)

(新聞「農民」2012.11.5付)
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2012年11月

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