「農民」記事データベース20121105-1044-08

穏やかな瀬戸内の離島・祝島

上関原発
反対のたたかいに触れて
(下)

小島和子さん


自立できる地域めざして

自然エネルギー100%プロジェクト
「食」分野で新たな仕事を創出

 反対運動と並行して新しい取り組みも…

 島民の多くが一丸となって粘り強い運動を続ける結束力の強さは、コミュニティーが生きている離島ならではかもしれません。しかし、ご多分にもれず祝島でも高齢化が進み、原発計画を白紙にできても、やがて地域の活力が失われてしまう可能性もあります。そこで島ではいま、原発反対運動と並行して、いくつか新しい取り組みが行われていました。

 その1つが2011年1月に始まった「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」。原発に頼らず自然エネルギーで自立できる島にしようと、現在2軒の住宅の屋根に合計8キロワット分の太陽光パネルを設置し、エネルギーシフトの道を探っている最中だといいます。

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祝島と本土を結ぶ橋はなく、1日3便の定期船が唯一の交通手段。連休で釣り客も多く訪れていた。海が豊かな証拠だろう

 長い眼で将来みすえ地に足の着いた活動

 最初にパネルを設置したのは、放牧豚などによる有畜複合農業を営む氏本長一さん。狭い養豚場での飼育と違い、元気に動き回れるおかげで、氏本さんの豚には余分な脂肪がなく、背中をなでると、思いのほか引き締まっていることがわかります。そのため、市場価格よりもいい値で出荷できるそうで、「むやみに規模を大きくしなくても、価値の高いものを生み出せばいい」という言葉に説得力を感じました。

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氏本さんになでてもらって、リラックスした様子の豚たち。田畑の雑草や家庭からのコンポストなど、身体にいいものだけを食べているせいか、豚もふんさえも、まったくにおわないのが驚き

 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸孝さんからは、農水産物やその他加工品の生産販売など、「食」分野で新たな仕事を創出している様子を伺いました。「島外からむやみに新しい産業を持ち込むのではなく、まずは地域の資源を掘り起こしたい」と言います。

 目の前の問題に決然と立ち向かう一方で、少し長い目で地域の将来を見据え、自立的な暮らしへの種まきを怠らないこと。地に足の着いたたたかい方を垣間見たような気がします。

(おわり)

(新聞「農民」2012.11.5付)
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2012年11月

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