米国産牛肉の輸入規制を緩和
20カ月齢制限を30カ月齢に拡大
食品安全委員会が答申
内閣府の食品安全委員会は10月22日、同委員会のプリオン専門調査会がまとめた、BSE対策の緩和を「容認」する評価書案を了承し、厚生労働省に答申しました。答申では、アメリカ産牛肉の輸入制限を、現行の「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」に拡大するなどの緩和をしても、「リスクはあったとしても、人への健康影響は無視できる」と結論付けています。
しかし、9月11日から1カ月間行われたパブリックコメント(国民からの意見募集)には、414件の意見が寄せられ、そのうち緩和に賛成する意見はわずか9件のみ。逆に、緩和に反対する意見、またアメリカでのBSE対策やBSEの科学的検証の不十分さを指摘する意見が圧倒的多数を占めました。
しかし同委員会では、「アメリカでの飼料規制や検査体制は有効であり、OIE(国際獣疫事務局)の基準も満たしている」とする認識を前提にして議論が進められてきました。また、国民から強い不安の声が上がっているアメリカでの安全対策の実施状況の確認などについては、厚労省や農水省など「リスク管理機関」が対処すべきで、「リスク評価機関」である食品安全委員会が決定する範囲ではないとして、最後まで国民世論に背を向けた姿勢を崩しませんでした。
世論無視できず意見付きの決定
このように、同委員会は答申内容こそ変更しませんでしたが、その一方でパブリックコメントの結果を完全に無視することもできず、「リスク管理措置(BSEの安全対策)に対する国民からの意見が多くあがっており、アメリカでの飼料規制などリスク管理措置の実施状況について、定期的な報告を求めるべき」との異例の意見が付け加えられました。
国産牛も緩和の恐れ
この答申を受けて、今後、厚労省は省令改正の手続きに入ることになり、一部の報道によると、「来年初めにも緩和に踏み切りたい考え」ともいわれています。
しかし今回の答申内容のとおりにBSE対策が緩和されれば、全国の牛肉の出荷や流通、消費全般に大きな混乱を来たすことは避けられません。なぜなら、今回の答申で緩和されているのは輸入牛肉の月齢制限だけでなく、国内産牛の検査対象月齢や、特定危険部位の除去についても緩和してよろしい、との評価結果となっているからです。
BSE検査について厚労省は、これまでも「21カ月齢以上だけで十分であり、全頭検査は必要ない」との姿勢でした。しかし実際には、47の全都道府県が予算を組み、20カ月齢以下の牛も含めて全頭検査を実施してきました。しかし今後、30カ月齢以下のと畜牛の検査費用がすべて都道府県の負担となれば、国内の検査体制への影響は測り知れません。またBSE感染の危険性が高いとされている特定危険部位を除去する月齢についても、国内措置、国境措置ともに大幅に緩和されることになり、消費者の信頼を揺るがしかねません。
地方議会で意見書をあげるなど、地域から「BSE対策の緩和するな」の声をあげていくことが求められています。
(新聞「農民」2012.11.5付)
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