農民連ふるさとネットワーク
石田さん 米づくり奮闘記(6)
収穫米の判定と価格の
不安もちつつ次の準備を
昼食の鮭(さけ)がうまい。労働の汗は快さに変わります。昼からの、稲刈りをする田んぼは5反(1500坪)です。田んぼに行くとコンバインは運び込まれていました。大林博さんは稲刈りを進め、コンバインにたまった稲実を車のタンクに移し、それがいっぱいになると、今度は奥さんの喜美子さんと運転を交代します。稲実の詰まった車を、大林さんが運転して、自宅の乾燥機に稲実を移します。何回も車で田んぼと乾燥機との間を往復します。その度に、夫婦で運転を交代するのです。
白いビーチパラソルを日よけに着けた赤いコンバインが、ヨットのように黄金色の稲穂の海に乗り入れます。異変に驚いたイナゴやバッタが飛び出します。それをツバメが、獲物とばかり集まり、襲います。刈り取られた剥き出しの地表からは、身を隠す術のないカエルやザリガニが、待っているサギについばまれます。赤いコンバインを境にして、青い天空を黒いツバメが舞い、黄土に映える地表は白いサギが群がる、生命の輪舞を見るようです。生きる必死さ・はかなさの美しさをも感じてしまいます。
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コンバインを運転する喜美子さん |
稲を刈る人も、収穫した米の等級・等外の判定と価格の不安を抱えながら、また明日からの、米づくりの準備と作業を巡らし、家族とともに日々過ごすのでしょうか。
そういえば、生産者の現地検討会に参加した若い子連れの農夫婦を思い出しました。検討会とは、仲間の生産者を自分の田んぼに案内して米づくりを説明し、みんなの批評・意見を聞いて、今後の生育や管理を決めていくのです。
その夫婦は、東日本大震災の影響を受け、「地震で土手が崩れ、畦はひび割れで水が抜ける」「用水路から水を引けるのが2日に1回」と、夫婦とも、目を田んぼから離さず、かわるがわる話していました。足にまとわりつく娘の頭をグッと引き寄せながら、「取れて7俵か」と。
農民のその営みが風土を守り、人が人として生きる糧を生産する。農民が報われ、笑える農政が実現するまで、作り手の心を伝えていきたいと改めて思います。
(おわり)
(新聞「農民」2012.10.29付)
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