「農民」記事データベース20121029-1043-15

福島・会津農民連会員
前田 新さんの詩集

『一粒の砂―フクシマから世界に』
を読んで

農民連本部 上山興士


筆者の強烈なメッセージと覚悟
日本の、全世界の原発を廃炉に

 福島・会津農民連の前田新(あらた)さんが、最近出版した詩集「一粒の砂―フクシマから世界に」をさっそく読んだ。

 朝の満員電車。押しつぶされそうになりながら、筆者が呼びかける新鮮で強烈なメッセージと必死に格闘する。時には悔しさで涙がにじみ、時には怒りで顔がこわばる。

 詩集には24編の詩が収められている。いずれもあの3月11日の東日本大震災と原発事故のあと、1年前後にかかれたものだ。題名の横には、日本や世界の著名な人々の言葉が添えられている。

 このなかで、私がドキッとした詩がある。それは「言葉」という作品で、その横には「精神の目とは、すなわち、言葉である」(P・ヴァレリー)と。

 私はこの詩を何回も読んで、自分ならどういう選択をしただろうかと考え、筆者の覚悟に身震いするほど感動した。他の詩もどれもすばらしい作品だった。

 74歳の筆者は、あとがきの中で、敗戦と原発という二つの人災に遭遇したことについて「事故発生から今日までの1年間に体験したことは、権力をもつものが国民のいのちと暮らしを軽んじ、いかにおのれの利権に執着するかであった。そのことを改めて思い知って、私は残余の人生のすべてを、核兵器廃絶とともに、原発を、福島県だけでなくわが国の、いや全世界の原発を廃炉にすることに、微力ながらかかわって生涯を終りたいと決意した。それはこの時代を生きた人間としての義務だと確信する」と、言い切っている。

 毎週金曜日に行われている「原発再稼動反対」「今すぐ原発ゼロに」の首相官邸前抗議行動に参加している私は、前田さんの決意を自分に引き寄せ、「一粒の砂」となって生き抜いていこうと思う。著者の記念すべき10冊目の力作を多くのみなさんに読んでいただきたいと願っている。

▼定価 2625円(税込み)
▼発行所 土曜美術社出版販売 TEL 03(5229)0730


 言 葉

逃げますか
それとも
ここで生きますか
と、問われて
私は一瞬、言葉につまる
冷静に考えるなら
ここは逃げるのが
もっとも妥当な選択なのだ
たとえ、危惧が的中したとはいえ
あまりの理不尽な恐怖に
私の身体は怒りに震えている
その怒りの奥から言葉は来た
家族をばらばらにされても
すべてを奪われても
それでも
ここで生きます

   (中略)
それでも
子や孫と別れて
私はここに生きる
逃げることもできるが
奪われた土地を取り戻すために
私はこの地に生きて死にたい
わが祖先とともにここでたたかいたい
それはいのちがけのたたかいになる
たたかいを挑む私の手に
武器とよぶものは何もない
精神の目 すなわち
言葉だけだ

(新聞「農民」2012.10.29付)
ライン

2012年10月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2012, 農民運動全国連合会