福島・会津農民連会員
前田 新さんの詩集
『一粒の砂―フクシマから世界に』
を読んで
農民連本部 上山興士
筆者の強烈なメッセージと覚悟
日本の、全世界の原発を廃炉に
福島・会津農民連の前田新(あらた)さんが、最近出版した詩集「一粒の砂―フクシマから世界に」をさっそく読んだ。
朝の満員電車。押しつぶされそうになりながら、筆者が呼びかける新鮮で強烈なメッセージと必死に格闘する。時には悔しさで涙がにじみ、時には怒りで顔がこわばる。
詩集には24編の詩が収められている。いずれもあの3月11日の東日本大震災と原発事故のあと、1年前後にかかれたものだ。題名の横には、日本や世界の著名な人々の言葉が添えられている。
このなかで、私がドキッとした詩がある。それは「言葉」という作品で、その横には「精神の目とは、すなわち、言葉である」(P・ヴァレリー)と。
私はこの詩を何回も読んで、自分ならどういう選択をしただろうかと考え、筆者の覚悟に身震いするほど感動した。他の詩もどれもすばらしい作品だった。
74歳の筆者は、あとがきの中で、敗戦と原発という二つの人災に遭遇したことについて「事故発生から今日までの1年間に体験したことは、権力をもつものが国民のいのちと暮らしを軽んじ、いかにおのれの利権に執着するかであった。そのことを改めて思い知って、私は残余の人生のすべてを、核兵器廃絶とともに、原発を、福島県だけでなくわが国の、いや全世界の原発を廃炉にすることに、微力ながらかかわって生涯を終りたいと決意した。それはこの時代を生きた人間としての義務だと確信する」と、言い切っている。
毎週金曜日に行われている「原発再稼動反対」「今すぐ原発ゼロに」の首相官邸前抗議行動に参加している私は、前田さんの決意を自分に引き寄せ、「一粒の砂」となって生き抜いていこうと思う。著者の記念すべき10冊目の力作を多くのみなさんに読んでいただきたいと願っている。
◇
▼定価 2625円(税込み)
▼発行所 土曜美術社出版販売 TEL 03(5229)0730
言 葉
逃げますか
それとも
ここで生きますか
と、問われて
私は一瞬、言葉につまる
冷静に考えるなら
ここは逃げるのが
もっとも妥当な選択なのだ
たとえ、危惧が的中したとはいえ
あまりの理不尽な恐怖に
私の身体は怒りに震えている
その怒りの奥から言葉は来た
家族をばらばらにされても
すべてを奪われても
それでも
ここで生きます
と
(中略)
それでも
子や孫と別れて
私はここに生きる
逃げることもできるが
奪われた土地を取り戻すために
私はこの地に生きて死にたい
わが祖先とともにここでたたかいたい
それはいのちがけのたたかいになる
たたかいを挑む私の手に
武器とよぶものは何もない
精神の目 すなわち
言葉だけだ
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(新聞「農民」2012.10.29付)
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