「女たちの戦争と平和資料館」を訪ねて
農民連女性部
関連/参加者の感想
尖閣諸島や竹島など領土問題が深刻化するなか、従軍慰安婦問題の国の責任を否定する暴言が政治家から相次いでいます。農民連女性部の役員10人は9月3日、従軍慰安婦と加害の歴史を学ぼうと、「女たちの戦争と平和資料館」(東京・新宿区)を訪ねました。
勇気ふるって証言した女性たち
暴言吐く政治家、許されない
従軍慰安婦問題涙しながら聞く
資料館は、NPO法人によって設立された、戦時性暴力の被害と加害の記録を集めた日本初の資料館です。資料館運営委員の有村順子さんが、従軍慰安婦問題と資料館の取り組みを丹念に説明してくれました。
有村さんは、アジア各地に広がる無数の慰安所の地図を示しながら、「このように日本軍が侵略したところには、戦場基地の一環として、軍によって慰安所がつくられました。女性たちが戦争を遂行するための道具にされたのです」と言います。
慰安婦にされたのは、多くはアジアの国々の女性たちでした。「だまされて、あるいは問答無用で拉致されて連れてこられ、監禁状態で来る日も来る日も兵士に強かんされ続けた」「抵抗すればすさまじい暴力をふるわれ、聴覚を失ったり、失明することも多かった」「あまりの苦しみに自殺する女性もたくさんいた」――慰安婦にされた女性たちの壮絶な証言を、激することなく、淡々と紹介する有村さんの説明に、農民連の女性たちは涙をぬぐいながら聞き入りました。
従軍慰安婦問題は、慰安婦にされた女性たちが実名で日本政府を提訴したことで調査が進み、1993年に日本政府も日本軍の慰安所の管理・経営への関与と責任を認めた「お詫(わ)びと反省」を表明(河野談話)しました。しかし今年8月、大阪市長で「大阪維新の会」代表の橋下徹氏が、「日本が国として従軍慰安婦を強制連行した証拠はない。河野談話は見直すべきだ」と発言したのを皮切りに、慰安婦問題での政治家の暴言が相次いでいます。
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従軍慰安婦にされた女性たちの顔写真を前に、有村さん(左)から説明を受ける女性部のみなさん |
日本の侵略行為今も鮮明な記憶
有村さんは、「公表すれば差別や二次被害の恐れもあるなかで、慰安婦にされた女性たちが渾身の勇気をふるってした証言ほど強力な証拠がほかにあるでしょうか」と反論します。
もとより、「だまして連れてきた」「拉致してきた」などという犯罪行為を日本軍が文章に記録するはずもなく、さらに日本軍は敗戦が決定的になると、都合の悪い文章は徹底的に燃やしてしまいました。それでも燃やしきれずに、日本軍が慰安婦制度を設置し、女性たちを移送し、維持・管理したことを示す文書が数多く残されています。
「慰安婦問題で重要なのは、日本軍が制度として組織的に行った戦争犯罪だったということです。自分の無知を武器にして暴言を吐く政治家も、そしてそれを許してしまう日本の現状も、世界から見れば許されないことです」と、有村さんは強調しました。
また、深刻化している領土問題に関連して有村さんは、「日本では反日デモは扇動されたものという報道もありますが、アジアでは、日本の侵略行為は今でも痛みのある、生々しい記憶です。侵略と加害の歴史に真摯(しんし)に向き合おうとしない日本政府の姿勢が、より問題を深刻化させるのではと危ぐしています」と述べました。
本田 操さん(愛知・豊橋農民組合)
加害の歴史を目の当たりにして、知らないことや衝撃を受けたことがたくさんありました。もっと時間をかけて、じっくり見てみたい。とても重い内容ですが、ここに来れば理解が深まると思う。多くの人に見てもらいたいと思った。地域に帰って、このことを伝えたい。でも、とくに男性にどう伝えたらいいのか、悩んでしまう。
沖津 由子さん(青森県農民連)
特別展の「沖縄の日本軍慰安所と米軍の性暴力」を見て、戦争の犠牲は女性や子どもにいくのだと痛感した。なかには10代や7歳の被害者もいて、とたんに自分の子どもの顔が浮かんできて、苦しくなった。従軍慰安婦のことなども、子どもたちにどう話したらいいのか…。でも子どもたちにもこういう歴史、事実を知ってほしい。「無知は罪」という言葉があるが、本当だと思った。女性が強くならねば。
(新聞「農民」2012.10.22付)
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