原発事故から1年半を経て
被災地・福島から
県農民連(前農民連会長) 佐々木 健三
仮設住宅のみなさんと交流
ものづくりの大切さ実感しながら
今年も生産に励み
原発事故から1年半が過ぎました。政府の「収束宣言」とは裏腹に、いまなお深刻な状況は変わっていません。16万余の人たちが県内外に避難し、厳しい生活を送っています。私たち農民は、東京電力に対して損害賠償請求運動をはじめ、除染や生活再建に取り組み、そうしたなかで今年もタネをまき生産に励んでいます。
農地の除染は表面の草などを取り除き、ゼオライトやカリ成分を散布し、なるべく深く土を反転させ、土壌のなかにセシウムを吸着させて作物には移行させないというやり方をしています。収穫した農作物は検査の結果、ほとんどが「不検出」です。今後のことは予断を許しませんが、とりあえず胸をなでおろしているところです。
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農作業する仮設住宅で暮らす人たち |
自作の野菜食べて
近くに110戸の仮設住宅があり、仮設に住むみなさんと交流を深めています。農地を提供した野菜づくりでは、「いままで農作業や仕事で忙しく働いていたのに、何もしないでいると震災や原発事故で転々と避難をしたことや、先の見えない将来のことなどを考えてしまう。畑仕事をしていると、つらい思いを一時ではありますが忘れることができる」と言います。そして、身体を動かすことで体調にもよく、自ら作ったものを食べる喜びなどおおいに役立ち、喜ばれています。
声つまらせる人も
また先日は、桃や梨を提供してもらい、私のトウモロコシといっしょに仮設住宅に届けました。いっしょに配った仲間は、「『こんな立派な果物とゆでたトウモロコシをいただき、なんとお礼を言ったらよいか』と声をつまらせる方がたびたびあった。こんなに喜んでもらえるとは思わなかった」と語っていました。
私たち農民連は、「ものを作ってこそ農民」と言っていますが、やはり生産をしていることの大切さを実感しました。被災地福島は、さまざまな困難のなかにありますが、国や東電へのたたかいに取り組みながら、身近にある仮設住宅の方々との交流や支援活動を続け、ともに前進したいと思っています。
(新聞「農民」2012.10.15付)
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