「農民」記事データベース20121008-1040-08

《寄 稿》

食の安全を犠牲にするTPP
絶対に参加は認められない

埼玉農民連会長 立石 昌義


 アメリカのオバマ大統領は、日本のTPP参加条件の一つに、アメリカ産牛肉の輸入条件を現行の「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」へ緩和するよう、執拗(しつよう)に求めています。そんななか、内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会は9月5日、BSE(牛海綿状脳症)対策見直しの立場から、アメリカ産牛肉の月齢制限を「30カ月齢以下」に引き上げるという規制緩和を答申しました。

 BSE検査はわずか0・1%

 問題なのは、日本が全頭の検査をしているのに対して、アメリカではと畜数4000万頭のうちわずか0・1%の4万頭しか検査されていない点です。また、日本では牛の肉骨粉は家畜の飼料として使用禁止になっていますが、アメリカでは牛以外には規制されていません。これは、1993年当時、牛の肉骨粉を反すう獣に与えることを禁止していたヨーロッパではブタ、ニワトリ用に肉骨粉を使用し、牛の飼料に混入したためにBSEを発生させたことからみても危険なことです。

 非定型BSEも知見集積が必要

 また、アメリカで発生した4頭目のBSE牛が「非定型BSEなので問題なし」としていますが、日本でも全頭検査で2例の非定型BSEが検出されています。1例目は23カ月齢で、しかも36頭の感染牛のうちの2例はかなり高率の検出率であり、BSE研究者の論文では「非定型BSEに伝達性が確認されており、人への感染リスクの知見の集積が必要」と指摘しています。

 輸入条件緩和の動きに呼応して、食中毒問題などで冷え込んでいる焼肉・牛丼業界の安いアメリカ産牛への期待が大きく、今後の消費動向が気にかかります。また、放射能汚染の風評被害に苦しむ肉牛生産者の苦境も心配されます。

 緩和には未確認なことが多すぎ

 BSEが種の壁を越え、人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病=若年性プリオン病を引き起こした1996年当時、ワクチンの安定剤にイギリス産牛から抽出されたゼラチンが使われていました。ゼラチンはプリオン病の病原とはならないとされてきましたが、予防原則からゼラチン・フリーのワクチン製作にかかわったことがある私の経験からも、未確認のことが多すぎる輸入条件の緩和は看過できません。

 TPP参加の条件に、生命にかかわる食の安全を犠牲にすることは絶対に認められません。

(新聞「農民」2012.10.8付)
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2012年10月

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