農家レストラン兼惣菜屋
ばあ〜ばのれすとらん“てご舎”
岩手 伊東庚子さん、菊池公代さん
岩手県の大東町農民組合の伊東庚(みち)子さんが仲間の菊池公代さんと、風情抜群の里山に農家レストラン兼総菜屋さんを開きました。伊東さんの手記を紹介します。
季節の野菜たっぷり
とことん手づくり
ナタネ油使った野菜加工も
人気メニューは畑丼とハーブ丼
この1月、ナタネ油と季節の野菜をふんだんに使った、念願の農家レストランと惣菜加工の店を、あぶら工房の隣の林の中に、ひっそりと開きました。私たち、2人のばあちゃんで。店の名前は、「ばぁ〜ばのれすとらん“てご舎”」。手づくりする、手ごさえするという意味のこの土地の言葉「てごっしゃ」からつけました。
とことん季節のもの、とことん野菜、とことん手づくりを、そして少しオシャレに、少し気取って。季節ごとの野菜スープ、オリジナルの季節の野菜をたっぷり使った「畑丼」や「ハーブ丼」などが人気メニューです。「野菜中心でこんなに満足したのは初めて」などと、若い人にも好評を得ています。
加工の部では、「しそ巻き」つくりの最盛期。11月から4月限定ですが、20種類以上の惣菜も作っていて、「作り方を教えて」などと、老人世帯や弁当の一品として利用者も増えてきました。「無化学調味料、地元のナタネ油を使った惣菜だから安心」と、知名度も広まってきています。
その土地の旬、食べ方がもっとも体に良い影響を与え、日本人の生命を守り続けてきました。
世界から絶賛される日本の優れた食文化、おふくろの味が食卓から消えつつあることに不安を感じ、先人たちが大切に伝えてきた、日本の食文化、家庭食を、次の世代に一品でも多く伝えることが私たちの役目と思っています。そして、地域で作り続けているナタネ油の地元普及を願っての、ちょっぴり遅咲きの店開きでした。
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伊東さん(左)と菊池さん |
お店の建物は古民家を再生
「てご舎」の建物は、古民家を再生。明かりにはろうそくを併用し、昔の家具、食器、鋳物のストーブをセット。郷愁を誘い、ホッとする空間になりました。多忙な毎日に疲れた人々の心を癒し、ばあちゃんの手料理にも舌鼓を、と願っています。来客は数える程度。コマーシャルは口伝え、老体に問いながらの気ままな完全予約制です。
地元の食生活から地元の農業、そして日本の農業が見えます。農民連で食べ物の生産にかかわり、手づくりしょうゆを作り、ナタネ油の製造に取り組んできて、真に健康な長寿社会をつくるには、日本型食生活や食文化を守り、伝承することの大切さを知らされてきました。「てご舎」での惣菜で、舌、胃袋を通して、一人でも多くの人に、私たちの思いを受け止めてもらいたい。そして日本の食、農の大切さを知り、私たちとともに農を守る人になってくれることを信じ、ものづくりにがんばっています。老体にむち打ちながら。でも、疲れっから、遊び心もいっぱい添えて。
▼ばぁ〜ばのれすとらん「てご舎」 岩手県一関市大東町渋民和田沢117 TEL 0191(75)3087
(新聞「農民」2012.10.1付)
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