BSE対策
月齢制限撤廃への
評価は今後も継続
内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会は9月5日、アメリカ、カナダ等からの牛肉の輸入規制について、現行の「月齢20カ月以下」から「30カ月以下」への緩和を容認する評価書案を承認。現在、「国民からの意見・情報を募る」として、パブリックコメントを募集しています。
食健連が食安委に要請
こうしたなか全国食健連は9月19日、食品安全委員会に、BSE対策を緩和しないよう要請を行いました。
全国食健連の坂口正明事務局長は、「これまでBSE対策について、政府自ら“新たな科学的知見があれば見直しを行う”と表明してきたのに、“新たな知見”がないまま、なぜ今、緩和するのか。TPP参加に向けて、アメリカの要求を受け入れるための政治的判断ではないか」とただしました。
応対した同委員会事務局の松尾佳典さんは、「日本でBSE対策が始まって10年がたち、国際的な状況変化も踏まえた見直しを厚労省から諮問された。遺伝子組み換えマウスの技術によってごく低濃度の感染実験ができるようになったなど、最新の科学的知見に基づいて専門家がリスク評価を慎重に行った結果、緩和しても、“人の健康へのリスクはあったとしても無視できる”という結果になった」と説明しました。
しかし参加者からは、「まったく納得できない。BSEのリスクがなくなっているわけではなく、規制を緩めるためにリスクを無視しないでほしい」という強い要望があがりました。
また要請のなかで、厚労省から出された諮問では、「30カ月齢よりさらに緩和した場合」も諮問されており、「月齢制限そのもの撤廃」も含めた、さらなる緩和に向けた評価が続いていることが明らかになりました。「輸入牛肉を食べさせられる国民から見たら、とんでもない諮問内容だ。そんなことは報道もされていない。もっと国民に知らせるべきだ」という意見が参加者からいっせいに上がりました。
緩和への疑問が続々と
9月20日には、食品安全委員会主催のリスクコミュニケーション(意見交換会)が行われ、約100人が参加しました。
評価書案を取りまとめたプリオン専門調査会の酒井健夫座長による説明に続いて、参加者との意見交換が行われましたが、評価書案への疑問が噴出。規制緩和に賛成する意見は1件もありませんでした。
とくに意見が多かったのは、アメリカでの飼料規制の実態をどのように調査し、検討したのかという点や、0・1%というアメリカのBSE検査率への疑念、そして非定型BSEの評価と対策の不十分さなどです。
しかし酒井座長は、「飼料規制が有効に機能しており、世界的にBSEの発生件数は激減している」、「ゼロリスクはありえない。あったとしても、無視できる」、「現地調査は行っていないが、各国の報告書は検討した。各国とも、飼料規制もBSE検査もOIE(国際獣疫事務局)の基準を順守しており、緩和しても問題ない」、「非定型BSEの感染性は、最新の科学的知見を検討し、リスクは無視できると判断した」などと回答。参加者の疑問に正面から答えないまま、わずか1時間で終了しました。
現在、同委員会ではパブリックコメントを募集しています。「国民の食の安全よりもアメリカの要求を優先する規制緩和は絶対に認められない」という、圧倒的な意見を集中しましょう。
(新聞「農民」2012.10.1付)
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