旬の味
戦後の一時代は本当に楽しかった。軍隊から復員してきたころ、農業を受け継いでどんな仕事でもした。食糧難の時代だから、国も増産政策を打ち出していた▼稲や麦、野菜に果樹…。田畑は遊んでいるどころではなかった。和牛に乳牛、養豚、養鶏、ヤギに養蜂まで、まるで動物園のようで耕地がいくらでもほしかった。山林に植樹し、木材や薪を切り出し炭を焼いた▼子どもたちにはヤギの乳を飲ませ、りっぱに育った。大家族がいっしょに暮らし、いつも農産物の出来不出来が語り合われ、みんな一生懸命働き仲がよかった▼ところが、貿易自由化の波が押し寄せると、何を作っても採算がたたず、若者は村を出ていった。田畑や山林は荒れ放題になった。あのころの時代がなつかしい▼いまTPPの押し付けである。日本をアメリカのいうままにする総仕上げ。これでは農村は壊滅だ。せっかくりっぱなほ場整備の田んぼは作ることも許されず、作るものも人もなく泣いている。ふるさとをわれわれ農民の手に返せ。 (力)
(新聞「農民」2012.9.24付)
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[2012年9月]
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