この人
奈良県農民連の車座座談会「えん側」を主宰する農家
福谷 亀義さん(58)
肩肘張らず楽しく続けたい
次々と新しい取り組みを広げている奈良県農民連で、お茶を飲みながらおしゃべりに花を咲かせる、そんな集まりが始まっています。名づけて「えん側」。その中心になっているのが、北和センター会員の福谷亀義さんです。
「えん側」が始まったのは、今年の1月。ポカポカ陽気の冬のある日、福谷さんと産直センターの職員さんとで、「今日みたいな暖かい日は、昔だったら老若男女を問わずえん側に集まってお茶でも飲んで、おしゃべりしたもんだよなぁ。“お前いま、何を作ってるんだ?”とか。今は、そういう会話ができる機会が減ったなぁ。そういう場がまたできたら、オモロイなぁ」と会話したのがきっかけでした。
さっそく「あえてテーマを決めずに、気楽に集まれる車座おしゃべり会をやってみよう。毎月第1土曜日に集まろう」となって、新聞「農民」にチラシを折り込み、県内全域に呼びかけました。開催は8月で9回を重ね、毎回7〜8人ほどが集まっています。
農民が集まれば、やはり話題は農作業や作物のこと。なかでも福谷さんがとくに心強く思っているのは、この「えん側」が、新規就農の青年たちにおじいちゃん、おばあちゃんの農の知恵を授ける場所になっていることです。「この地域ではどういう時期に、どういう農作業をするとか、種のまき方、栽培のコツ、効率的な作業方法…。今はインターネットでいくらでもハウツーがあふれているけど、本当に現実に役立つ知恵を聞けるようなつながりは薄れつつあります。この『えん側』に若い新規就農の青年がこまめに集まって来てくれて、一生懸命に話をしてくれるのは、とてもうれしい」と福谷さん。
TPPや農政への怒りが噴出したり、新規就農の青年に農作業のアルバイトの話が舞い込んだりしたこともあります。「これからも肩肘張らず、楽しく、息長く続けていきたい」――「えん側」のこれからが、ますます楽しみです。
(新聞「農民」2012.9.17付)
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