食品表示一元化検討会の問題点
緊急院内学習会での発言から
主婦連・山根香織会長
関連/個別課題
消費者庁の食品表示一元化検討会が12回開催された後、報告書がまとめられました。8月28日には、「食品表示を考える市民ネットワーク」が国会内で「緊急院内学習会」を開き、報告書の問題点が議論されました。検討会委員の一人、主婦連合会・山根香織会長の発言(要旨)を紹介します。
議論し尽くせず課題残る
表示制度の後退招く恐れも
選択の権利が確保されれば…
JAS法、食品衛生法、健康増進法などの法律で定められている現行の食品表示を一元化することは、長く待ち望まれていたものです。しかし、検討会は、議論し尽くせなかった点が多々あり、進め方も課題を残すものとなりました。表示の執行体制についての議論もなく、このままでは表示制度が後退するのではないかと心配です。
食品表示の目的は、消費者基本法の理念に基づき、消費者の知る権利、選択の権利が確保されることです。そのために事業者に食品の成り立ちに関する情報をわかりやすく開示させることが必要です。
しかし、検討会では、事業者のコスト負担が必要以上に強調され、真に消費者にとってわかりやすい表示とは何か、そもそも現状の表示のどこに問題があり、どう改善されるべきかについての議論が十分なされませんでした。
高齢化社会への対応と称して文字を大きくし、そのためには義務表示の簡素化(たとえばホームページの掲載で可とするなど)の可能性も示すなど、表示の充実・強化という国際的な流れにも逆行する提案となっており、この報告書をもとに、2013年3月まで、法案作成を急ぐことは食品表示制度の後退を招く恐れがあり、反対せざるをえません。
“簡素化がいい”間違った考え
どんな材料に何が加えられ、誰がいつ、どこで、どのように作ったかを伝える表示とすべきであり、簡素化をわかりやすい表示と考えるのは間違いです。
議論されずに先送りとなった、以下にあげる個別課題を検討する場を早急に設け、その場には、真に消費者の立場を代弁する消費者代表はもちろん、消費者目線で表示の充実に取り組んでいる事業者代表も含め、食品表示が本当に消費者の権利を保障するものとすべきです。
・監視・執行体制
表示規制を一元化しても、監視等の執行体制が現行通りでは抜け穴が生じる。執行も一元化し、罰則は人的ミスによる誤表示には軽く、故意による偽装には重くするなどの検討をすべき。
・加工食品の原料原産地表示
トレーサビリティーの確立とそれに基づく原産地表示は多くの消費者が求めており、確実な義務化拡大を進めるための検討が必要。
・遺伝子組み換え食品表示
EUでは、使用していれば飼料も含めすべてを表示しているのに対し、日本では対象外が多く、何も書いていないものが不使用なのか、対象外なのかもわからない。混入許容率もEU並みの0・9%(日本は5%)とするよう検討すべき。
・食品添加物表示
国際的にも主流である物質名と使用目的の明記が求められる。「不使用」「無添加」などの表示が誤認を与えないためのルール化が必要。
・主な原材料の含有量表示
品質の判断に役立つ原材料の含有割合(水も含めた重量の%表示)が求められる。
・インターネット、カタログの表示
大きなマーケットとなっているこの分野を表示義務の対象とし、対応することは急務。いわゆる健康食品の表示に関する問題も改善が望まれる。
・期限表示
製造年月日表示を求める声は多く、消費期限・賞味期限表示のあり方とともに考える必要がある。
・製造所記号番号
消費者には製造業者の名称及びその所在地を知らせる必要があり、番号表示ではわからず、不適切であることから廃止を検討すべき。
・対象食品
アルコール・アルコール飲料は当然食品であり、その表示は健康にかかわる重要なものであることから表示の対象とすべき。
(新聞「農民」2012.9.17付)
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