韓米FTA・韓中FTA
韓国でのたたかい
韓国女性農民会 ユン・グンスンさんに聞く
韓国のイ・ミョンバク大統領は、国民の反対の声を押し切って3月15日、韓米FTAを発効させました。このほど来日したビア・カンペシーナの国際調整委員で韓国女性農民会(KWPA)のユン・グンスンさんに、韓米FTA発効後の状況とFTAとのたたかいについて聞きました。
米国産牛肉輸入で畜産は大打撃
国内法よりFTA優先の実例も
米国産オレンジ国産を追いやる
韓米FTAが発効して、市民生活への影響はまだあらわれていませんが、最も影響を受けているのは畜産農家です。「韓牛」という国産牛を生産している零細・小規模な農家が、アメリカからの牛肉輸入で牛肉の価格が下がり、飼料穀物の高騰で廃業に追い込まれています。また、都市の商店にはアメリカ産のオレンジがあふれ、韓国産の果物を隅のほうに追いやっています。それに今年は天候不順で果物は不作でした。幸か不幸か、そのため価格は暴落していませんが、農家にとっては所得が減って厳しい状況です。
また、ローンスターというアメリカの投資企業が損害を被ったということで、韓国政府を国際投資紛争仲裁センターに提訴するという文書を韓国政府に送った、と報道されています。これは韓米FTAの毒素条項のひとつ、ISD条項によるものです。詳しくは企業秘密でわかりませんが、ローンスターは韓国の企業を買収してすぐに撤退しようとしましたが、韓国の国内法で規制されていてすぐには撤退できないために損害を被ったということのようです。なんて理不尽なのでしょうか。韓国国民はまさに国内法よりFTAが優先することを、身をもって体験しようとしています。
浮上してきた韓中FTA問題
韓国ではいまも、韓米FTAへの反対運動が続いていますが、もうひとつ韓中FTAの問題が浮上しています。
イ・ミョンバク大統領は、今度は中国とFTAを締結しようと、これまでに3回の会合を行っています。その内容はまったくの秘密でよくわかりませんが、どうやらつい最近開かれた3回目の会合で農業分野が取り上げられたようです。中国とFTAを結べば、韓国農業ははかりしれない影響を受けるでしょう。だから私たちは、「韓米FTA阻止・韓中FTA反対闘争本部」と名称を改めてたたかいを強めています。
食糧主権かかげ連帯つよめよう
ビア・カンペシーナは、7月に開かれたFTA戦略会議のなかで提案された学習用のテキストとして、「FTA/TPPの学習ブックレット」(英語版)を緊急に作りました。日本のみなさんの集会やデモの写真も使っています。
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できあがったばかりの「FTA/TPP学習ブックレット」を紹介するユン・グンスンさん |
ビア・カンペシーナは、韓国や日本といった当事国だけの問題ではなく、「新自由主義・市場原理」とのたたかいと位置づけ国際連帯を強めていくことにしています。FTA/TPPという貿易のあり方に対して、「食糧主権」を掲げ、たたかっていきましょう。
(新聞「農民」2012.9.17付)
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