第58回日本母親大会 in 新潟
TPP参加 消費税増税
どっちもダメ
関連/農村のお母さん交流会も盛況
「命を生みだす母親は、命を育て、命を守ることを望みます」をスローガンに今年で58回目となった日本母親大会が、8月25、26の両日、新潟市で開催されました。1日目は34のテーマに及ぶ分科会やシンポジウム、特別企画などが開かれ、2日目は全体会を開催。全国からのべ1万3200人が集いました。
1日目 分科会
「TPPと私たちの生活――日本の農業、労働、医療制度、中小業者などの将来」をテーマにしたシンポジウムには、約500人が詰めかけ、TPP問題への高い関心をうかがわせました。JA新潟中央会常務理事の高橋一成さん、全労連事務局長の小田川義和さん、全国保険医団体連合会(保団連)事務局長の寺尾正之さん、日本農業新聞記者の金(キン)哲洙(テッシュ)さんがパネリストとして登壇。HNKアナウンサーの古屋和雄さんがコーディネーターを務めました。
高橋さんは、TPP参加で食料自給率が13%に低下するなど、国内農業に大きな悪影響を及ぼすことを指摘。「新潟産コシヒカリは生き残るという試算もあるが、国全体で9割もの米が減産するなかで、新潟県の農業だけが無傷で生き残ることなどありえない。TPP参加は、関連産業にも打撃を与え、地域経済も破壊する」と訴えました。
金哲洙さんは、韓米FTAについて報告し、「TPPも韓米FTAも、経済が成長すれば雇用が拡大し、国民も幸せになるという論理で推し進められている。しかし実際は、大企業ばかりがもうけ、そのもうけは海外投資に向けられて、国内経済には貢献しない。本当の経済発展とは、各地域の産業を盛んにすることで雇用を拡大し、それが国民全体につながっていくものではないだろうか。TPPやFTAの問題は、社会のありかたの選択だ」と強調しました。
寺尾さんは、TPP参加によって医薬品が高騰し、営利企業病院や混合診療の全面解禁など、もうけ最優先の医療になってしまう危険性を具体的に紹介。「アメリカでは命にかかわる診察や治療の技術まで特許になっており、お金を払わねば使えない。命を守る医療を商品にしていいのか。憲法25条の生きる権利をどう実現するのかが問われている」と述べました。
会場からは、「お金がないと医療を受けられなくなるかもしれないというTPP参加は、本当にこわい。高い保険に入っていないと、救急車にも乗れないようになってしまうのか?」という質問も飛び出しました。
群馬県農民連女性部の木村君江さんが、「地域の農家にはまだまだTPPの内容が知られていない。地域で、少人数でもいいので集まって学ぶ機会を持って、TPP参加を阻止するために、1人でも多くの人が反対の声を上げていこう」と、元気に訴え、会場から大きな拍手がわきました。
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全体会で舞台の上から訴える農民連女性部のお母さんたち |
2日目 全体会
2日目の全体会では、ジャーナリストの斎藤貴男さんが「格差と貧困のない社会を―3・11以後…私たちはどう生きるのか」と題して記念講演しました。斎藤さんは、大企業を優遇し、国民生活を切り捨てる現在の民主党政治に対し、「小泉構造改革ですらできなかった新自由主義的な政治をやろうとしている」と厳しく批判。“人間の序列化”をすすめる「ゆとり教育」や、格差社会、権力による監視統制の実態などを紹介しました。
各地からの運動交流では、新潟県の100人が舞台に登壇し、住民投票で原発の建設を中止させた旧巻町の運動を、合唱と朗読の構成舞台で伝えました。農民連女性部ももんぺに姉さんかぶり姿で登場し、「暮らしと農業を壊すTPPも消費税増税もいりません」と訴えました。
1日目の夜には、恒例の「農村のお母さんの交流会」が開かれ、およそ80人が参加しました。
新潟の郷土食「のっぺ」や十全ナスの漬物などの郷土料理や、旬の野菜、果物がテーブルいっぱいに並び、各県からの参加者紹介をしながら、にぎやかに交流しました。
福島のお母さんが、原発事故で今なお生産できない苦しみと原発再稼働への深い怒りを語ると、聞いているお母さんもみんな涙目に。開催準備に奔走した新潟県農民連のお母ちゃん、お父ちゃんたちがズラリと並んであいさつすると、大きな拍手が送られました。
(新聞「農民」2012.9.10付)
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