原発事故の賠償請求
農民連
東京電力・政府と交渉
東電「中間指針」盾に支払い拒むな
政府に「中間指針」見直しを要求
東京電力の福島第一原発事故の損害賠償の問題で、農民連は8月29日、東京電力と文部科学省、経済産業省、農林水産省と交渉を行い、12府県から26人が参加しました。
事故から1年5カ月が経過した今も、さまざまな被害が続いています。しかし東電は、事実上の「国有化」後、損害賠償請求に対して、原子力損害賠償審査会(原賠審)の「中間指針」を盾にとって、きわめて「恣意的」な判断で、支払いを拒否する姿勢を強めています。
交渉では、各地の実情が具体的に訴えられ、改善が求められたほか、再稼働ありきの原発政策や、原賠審の「中間指針」の見直しなどを要求しました。
【文部科学省】
農民連―東電が「中間指針」の類型に明記がないことを盾にとって、支払いを拒否する事例が相次いでいる。たとえば福島県を除く東北5県の風評被害がみな一斉に門前払いされている。しかし「中間指針」で対象外とされた宮城県でも有機栽培米などが大打撃を受けており、損害の実態に即して賠償するよう東電に指導するべきだ。
文科省―「中間指針」では、指針にないものでも損害があれば賠償すべきと明記している。東電に指導していきたい。
農民連―「中間指針」を盾にとる東電も問題だが、「中間指針」自体が損害の実態をまったく反映していない。「中間指針」を見直すべきだ。
【経済産業省】
農民連―東電は、廃用牛の掛かり増し費用(飼料代など)について、「中間指針」を盾にとって、「売れてからでないと精算できない」と支払いを拒否している。それでなくても農家は牛が売れず、非常に困っている。せめて現実に出ている掛かり増しの損害は毎月払うよう、指導すべきだ。
経産省―その話は聞いている。柔軟に対応するよう指導していく。
【農林水産省】
農民連―放射性物質に汚染された原木を買ったシイタケ農家が、その処分を自治体に要請したが、自治体も風評被害が広がることを恐れて焼却処分に応じてくれず、新たなシイタケ原木が導入できないでいる。原因者である東電に汚染原木の処分についても責任をとらせてほしい。
農民連―農地土壌の汚染状況を、もっと細かく実態調査してほしい。集落で1地点では少なすぎて、どうしようもない。
農水省―予算の関係で、昨年のような多くの地点は調査できない。文科省が測定した空間放射線量から土壌汚染を推定する方法も確立したので、協力していく。
【東京電力】
農民連―24年産のお茶について、23年産と同様に在庫処理に対して賠償してほしい。
東電―賠償すべきほどの「相当因果関係」があれば賠償する。しかし24年産のお茶は放射性物質の基準値を上回ったものは出回っておらず、安全なものを消費者が買い控えしたくなる心理は、「合理的」とはいえない。
農民連―とんでもない。「合理的」かどうかを決めるのは消費者であって、加害者である東電が決めるものではない。原発事故がなければなかったはずの損害だ。損害がなくなるまで、賠償し続けるべきだ。
農民連―「中間指針」に明記されていないところでも、広範な風評被害を受けている。有機栽培米のように、安全・安心にこだわった消費者ほど大打撃を受けている。安全を求めて長い間してきた努力が、原発事故で一瞬にして壊されてしまった。この重みをきちんと考えてほしい。
農民連―養豚農家にも深刻な風評被害が出ているが、東電は他の農家からの請求がないと支払いに応じず、半年も棚上げになっている。また廃用豚についてももともと値段のないものだからと支払いを拒否している。実際に損害が出ているのだから、誰も納得しないような理由を持ち出さず、賠償すべきだ。
(新聞「農民」2012.9.10付)
|