「農民」記事データベース20120910-1036-01

自給率向上・戸別所得補償・米の需給管理を批判

財務省まとめた
「農政の目標についての課題」

TPP参加前提に農業解体ねらう


財界の“農業切り捨て”を代弁

 財務省は8月22日、「農政の目標についての課題」と題する中長期の論点をまとめました。これは、国民の声を無視して消費税増税を強行成立させた野田政権と財務省が、農水予算を“無駄遣い”であるかのように描いて、今後、大ナタを振るう“宣戦布告”です。また、TPPへの参加を前提に農業の解体をねらう政府・財界の本音をあからさまに打ち出したものです。

 食料自給率や戸別所得補償制度、TPP・FTAなど、農政全般にわたって検証していますが、財務省が標的にしているのは、民主党政権の看板であり、農水予算の核でもある戸別所得補償制度です。

 50%目標を問題視

 食料自給率について「食料・農業・農村基本法」で「食料の安定的な供給は、国内生産の増大を基本」とし、「基本計画」で2020年度目標を50%にしていることを問題視。異常に低い40%の食料自給率を、「低下しているが安定して推移している」と現状を容認したうえで、耕地面積の減少、水利施設の老朽化、農業者の高齢化をあげて「農業の基盤は弱体化」しており、食料自給率の向上に「偏重」した政策の見直しを求めています。

 また、転作作物として水田に麦や大豆を生産していることについて、「約3500億円もの巨額を投じているが、食料自給率への寄与は限定的」と攻撃。麦や大豆の食料自給率を上げるために予算を投ずるよりも、外国産小麦を買い入れて備蓄したほうが「財政上も安上がり」だというわけです。

 いま、世界的な異常気象のもとで穀物価格が高騰するなど、食料危機は深化の一途をたどっています。こうしたときに、食料自給政策の放棄を迫る亡国政治の地金をむき出しにしたものです。

 さらに、貿易自由化に関連して「高いレベルの経済連携に参加した場合の価格低下を直接補てんするような措置は、自由化のメリットを相殺し、他分野とくらべても不公平。財政上も、数兆円の経費を要しかねない」とバッサリ。

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収穫が喜べる農政へ−各地で稲刈りが始まっています

 市場原理を貫け

 米政策についても、「かつて、食糧管理法による国の全量管理が基本であったが、そのDNA(遺伝子)はいまも残っている」とし、市場原理主義を貫徹し国の管理を徹底的に排除すべきだと主張しています。しかし、自公政権以来の「米政策」のどこに食管制度のDNAが残っているというのでしょうか。

 民主党政権が真っ先に導入したのが米の先物取引でした。「過剰」を敵視して約800万トンの需要にぴったりあわせた生産を農家に押し付け、価格と流通は市場に丸投げ。その結果、わずかの過不足で米の価格が乱高下し、米不足で卸から小売や外食産業などに米がまわらず、大手の卸が中小卸に横流しして値を吊り上げるなど、主食である米の流通が大混乱しています。政府も、自ら決めた備蓄ルールを無視して備蓄米を放出せざるを得ない状況となっています。

 財務省のねらいは、唯一、自給できる主食・米に対する首の皮一枚の政策である戸別所得補償制度の切り崩しです。民主党政権は、TPPに参加した際の対策として戸別所得補償制度による価格補てんをあげてきましたが、これが真っ赤なウソであることの宣言です。

(新聞「農民」2012.9.10付)
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2012年9月

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