分科会
全国研究交流集会から
加工用米の取り組みについて
全面作付で減反クリア
経営としても有利に
岩手県農民連農産物供給センター
小原 昭栄さん
一昨年から始まった米の戸別所得補償制度は、減反の達成が条件です。「田んぼを活用したい」と、減反をしないために交付金を受けられない農家もいます。しかし、田んぼに全量作付けしても、加工用米など主食用米以外に出荷することで、減反条件をクリアすることができます。
ところが、加工用米は実需者との契約など、個人で取り組むにはむずかしい面があります。そこで岩手県農民連農産物供給センターでは、農民連ふるさとネットワークの紹介で実需者と契約し、加工用米に取り組んできました。
昨年は238袋の計画でしたが、実際は地域作況が100程度の収量なのに103になったため、245袋の出荷を命じられ、その分高く売れる主食米を減らすことになりました。また、農政事務所の職員が加工用米の行き先を調査に来て、「伝票を見せろ」とか「通帳を見せろ」などとんでもない態度でした。
今年は6人の農家が加工用米に取り組みました。このうち3人は昨年まで「減反未達成」で戸別所得補償を受けられなかった人です。加工用米の取り組みは、実需者との契約書の作成や農政事務所の調査などめんどうな面もありますが、転作でほかの作物を作る手間をかけずに、10アールあたり2万円の交付金が受けられ、経営としても有利になります。
戸別所得補償制度には問題もありますが、岩手県農民連農産物供給センターでは、稲作農家の経営を守るためにこういった取り組みをすすめていくことにしています。
実需者と生産者が
顔の見える関係へ
農民連ふるさとネット
横山 昭三さん
昨年7月から米トレサビリティ法が施行され、米を原料とする加工品も「原産国表示」が義務化され、国産米の需要が増えています。しかし、10アール8万円助成の飼料用米や米粉用米に押されて加工用米の生産は後退しています。日本酒や焼酎メーカーは原料を「国産」で販売開始し、ある大手焼酎メーカーは予定の米が集まらず、くず米まで集めているといわれています。
個人で取り組む加工用米は、農協・全農にまかせる加工用米と違って、お互い顔の見える長い取引が可能です。地域作況に合わせて加工用米を優先的に出荷させられ、主食用米が減らせるという問題も、農民連は改善を要求してきましたが、「実際の生産量にあわせた出荷でよい」との改善も実現させました。
加工用米の価格はいま、60キロあたり1万円程度ですが、今後下がることがあれば、実需者といっしょに「飼料用米並みの助成金(10アールあたり8万円)を加工用米にも付けろ」の要求と運動を展開すべきです。
(新聞「農民」2012.9.3付)
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