まちに新風吹き込む若手農家
農業は人と地域を結ぶ絆
グループ「アグリホリック」の4人
愛知県の東端、新城(しんしろ)市で今年4月に発足した若手農家のグループが新風を吹き込んでいます。その名は「アグリホリック」。アグリ(農業)とホリック(中毒)を組み合わせた造語で、農産物の生産や販売だけでなく、地域の活性化に大きく貢献しています。
商店街にぎわす軽トラ市で販売
7月23日の日曜日。新城市の駅前商店街で、全国3大軽トラ市の一つ、「のんほいルロット」が開催されました。これは、地元の商工会が毎月開いている軽トラ市で、市内や近隣市町村の農家、商店などが、軽トラックで農産物や加工品、商品を運んできて販売します。
いつもは人通りがまばらな商店街も、この日ばかりは、買い物客らでにぎわいを取り戻します。
田畑約2ヘクタールを4人で栽培する「アグリホリック」の若者たちは、買い物客らに生産の苦労や調理方法を伝えながら、米ぬかや魚粉のぼかし肥料を使って育てた有機・無農薬の自慢の野菜を懸命に売り込みました。この日は、新城農民連も出店し、新鮮な野菜やお茶をアピールしました。
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軽トラ市で生産の苦労や調理のし方を伝えながらお客さんと対話 |
しげじぃスイカ継承して3年目
「アグリホリック」代表の安形(あがた)真さん(30)は、祖父「しげじぃ」(安形茂さん=82=)のスイカを継承して3年目。さらに高品質のスイカをめざしています。新城で40年以上、スイカを作り続けてきた名人「しげじぃ」の魂を受け継ごうと始まったのが「しげじぃの命のスイカプロジェクト」です。
安形さんと一緒に「アグリホリック」を立ち上げた、ファームリーダーの白井陽さん(25)は生産指導を担当しています。誰もが食べられるおいしい野菜を栽培するために日々奮闘中で、メンバーの栽培技術の向上をめざしています。農業スタート時から耕作放棄地の開墾を手がけ、「地元の農家から『耕してくれてありがとう』と感謝されるとうれしい。放棄地の解消に努力したい」と意欲満々です。
“おいしいョ”のひと言が
生きがいとパワーの源
消費者との交流楽しむ企画も
新城出身の白井俊充さん(25)は、都会と農村の交流を促すグリーンツーリズムの担当。東京の大学を卒業後、「サラリーマンとして過ごすよりも、生まれ育った新城の活性化に貢献したい」と農業にあこがれ、3月から本格的に就農しました。「対面販売で『野菜、おいしかったよ』と言われると、生きがいとパワーをもらえる」と、消費者との交流を楽しんでいます。
こうした喜びを、都会の人にも知ってもらおうとグリーンツーリズムに力が入ります。今年の5月には、「田舎体験」と称して、男女各20人を招き、田植え、バーベキューなどの自然体験、料理教室を実施しました。
東京生まれの東京育ちで奮闘
俊充さんの大学の後輩で、今年の3月から就農した保坂進之介さん(23)は東京生まれの東京育ち。俊充さんから誘われて就農してみたものの、当初は「慣れない農作業はきつい」「腰が痛くなる」など、苦戦の連続でしたが、スイカの生産から収穫までを体験し、子どもたちが、スイカをおいしそうにほおばる姿をみて、生産する喜びを味わいました。「自分が生産してわかったのですが、食にもっと関心をもってもらい、食への意識をしっかり持てるようなおとなになってほしいですね」
イベント担当の保坂さん。7月8日には、スイカフェスティバルを開催し、スイカ割り、早食い競争、スイカ駅伝など、地元の農業を盛り上げるイベントの企画に力を発揮しています。
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ナスの収穫まっ盛り。(左から)保坂さん、安形さん、白井俊充さん、白井陽さん |
地域もり上げる多彩なイベント
地域を励ます4人の取り組み
代表の安形さんは「農業は食べものの生産だけでなく、人と地域を結ぶ大切な絆(きずな)です。この仕事を誇りにしています。僕たちの作る農産物から何かを感じてほしい。『アグリホリック』の活動を通じて、将来、若い人が農業を選んでもらえるようなサポートをしていきたい」と夢は膨みます。
4人おそろいのTシャツは、新城農民連の事務局員、松井寛さん(34)がデザインしたもの。松井さんは「彼らの取り組みは地域を大きく励ましています。農民連も、地域の活性化のためにがんばっていきたい」と話しています。
(新聞「農民」2012.8.27付)
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