「農民」記事データベース20120820-1033-06

東京で豊岡(兵庫)エキシビション

関連/農法にかける私の思いや夢は?


コウノトリの米を食べてほしい

田んぼに子どもたちが帰ってきた

 コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県豊岡市は7月25日、まちをアピールする「豊岡エキシビション2012」を都内で開きました。

画像 豊岡市の中貝宗治市長が「小さな世界都市へ、果敢に、大胆に挑戦」のテーマでプレゼンテーションを行いました。

 「コウノトリ復帰の取り組みで、田んぼに生き物が帰ってきた。同時に誇りに思うのは、田んぼに子どもたちが帰ってきたことだ」と述べた中貝市長。小学生が、コウノトリ復帰の活動に参加するなかで、豊岡の米を食べてもらうために何をしたらいいのか自分たちで考え、最初にコンビニエンスストアに行って「おにぎりに豊岡の米を使ってほしい」と要請したことを語りました。

 値段の問題などで困難なことがわかると、次に、市長の元を直接訪れ、「学校給食に使ってほしい」と提案。今では給食で週に2回、地元産の米が出されています。

 さらに、「米を被災地に届けよう」と考えた子どもたちは、運送費のことで運送会社へ、米袋のことでJAを訪ね、募金活動などを通じて、東北に地元産の米を届けた取り組みを紹介しました。

 中貝市長は「自らが考え、行動することが、私たちのめざす世界都市の市民として求められている」と述べました。

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熱心に聞き入る参加者

 次に、「豊岡放談」と題するトークで、「コウノトリ育(はぐく)む農法」を実践する3人の米農家が、農法にかける思いや今後の夢を語り合いました。(発言要旨は別項)

 また、1年をかけて、市の観光地、城崎(きのさき)を撮影した映像作家、藤原次郎さんへのインタビューが行われました。

 第2部の豊岡の特産物を紹介し、食を楽しむ交流会では、但馬牛ステーキ、甘エビのにぎりずし、地元の米のおにぎりなどを味わいながら、歓談しました。


農法にかける私の思いや夢は?

コウノトリ育む農法に取り組む
3人の米農家がトーク

 地域の宝物の1つに

 コウノトリ育む農法が誕生した当初から取り組み、地元小学生への環境学習に積極的に携わっている畷(なわて)悦喜さん 育む農法とは、コウノトリも住める田んぼをつくり、豊岡に合った水田をつくること。コウノトリとの「いつか、きっと空に帰す」という約束を果たすために取り組んでいる。田んぼの生き物調査を通じて、いろんな種類の生物が役割を担いながら、米づくりに影響を与えていることがわかった。農薬を使わない田んぼが地域の宝物の一つになっているのはうれしいことだ。

 人間が一番変わった

 「豊岡エコファーマーズ」のリーダー、農民連会員で、おいしい米づくりのノウハウを一年一年積み重ねている田中定さん コウノトリと共生するために農薬・化学肥料に頼らず、生き物が増える環境を作り出すことが育む農法。毎年いろんな発見があり、失敗と成功の微妙なバランスを楽しんでいる。農法で、目に見える生き物が増えたと同時に、微生物が増え、田んぼの土が変わり始めた。田んぼのもつ可能性がみえてきた。一番変わったのは人間だ。楽しく、おもしろい農業を続けていきたいし、年をとって歯が抜け終わらないうちに次の世代に伝えていきたい。

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コウノトリ育む農法への夢を語り合う(右から)根岸さん、田中さん、畷さん

 田んぼの中に宇宙が

 「豊岡エコファーマーズ」の若手メンバーで、地元農産物を扱う小売店も経営している根岸謙次さん 今、この時期(7月下旬)が稲や生物にとって生命力を発揮している時期だ。人間と自然のリズムの波長が合い、大きな波になったときに達成感があり、新しいことをやる意欲がでてくる。農法の指導者から「田んぼの中に宇宙がある」と言われたが、目に見える生物も増えたと同時に、目に見えない微生物も爆発的に増え、可能性が広がっている。小魚やオタマジャクシが逃げる田んぼの音は気持ちを癒してくれるし、生物の循環を楽しんでいる。体感的に身についた無農薬栽培を今後も続けてきたい。

(新聞「農民」2012.8.20付)
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2012年8月

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