「農民」記事データベース20120730-1031-14

直売に、農産加工に、在来種
大いに作って、長所伝えよう

 「おばあさんが昔作っていたサツマイモの苗がほしいんだけど、あれは在来種かしら? どこかで手に入るかしら?」「そういえば、昔はこの地域でしか作られていないような品種がたくさんあったよね。地域の在来種について、もっと知りたいね」――農家のお母ちゃんたちからわき上がったこんな声に応えて、神奈川県女性部の10人が7月5日、平塚市にある神奈川県農業技術センターを訪問しました。


神奈川農民連女性部
県農業技術センター訪問

 在来品種を保存 新品種の開発も

 説明してくれたのは、普及指導部野菜課長の藤代岳雄さん。神奈川県では、ナス、キュウリ、メロン、ダイコン、ネギ類、タマネギ、サトイモ、のらぼう菜など、県内の在来品種を保存・採取しているほか、在来種から育種した新品種の開発に取り組んでいます。藤代さんはスライドを使って、在来種の来歴や特性、新品種などを一つ一つ具体的に紹介しました。

 たとえば、相模半白(さがみはんじろ)というキュウリの在来種は、ずんぐりと短く、お尻にいくにつれて白く、イボが黒いなど、一般に出回っている緑キュウリとは見た目もまったく違う実がなります。やや病気に弱いことや、F1品種の緑キュウリが台頭したことなどから、一時はほとんど栽培されなくなりましたが、実の肉質が締まっていて、独特の歯切れ(パリパリ感)があり、漬物やピクルスなどにすると、とてもおいしい品種だそうです。

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藤代さんに熱心に質問する女性たち

 良い在来種はみんなに配って

 女性たちは、もの作りに直結する藤代さんの話に目がランラン。さっそく「病気になりにくく作るにはどうしたらいいか」「種や苗はどこで入手できるのか」「なくなってしまった在来種は復活できないのか」などの質問が飛び出しました。藤代さんは、「少量で有償になりますが、ここでお分けできる品種もあります」「自家採種は何代も作り続けていると、どうしても劣化しやすい。いいものを出荷したいのが農家の人情ですが、次の年のために、良くできた苗から採種してください」「良い在来種は1人で囲い込まず、みんなに種を配って、良くできたものの種を回収するくらいの心意気で」などと、ていねいに答えていました。

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2年がかりで採種する在来種のタマネギを前に

 多国籍企業の種子支配でなく

 また参加者から、「遺伝子組み換え作物やF1品種など、多国籍企業による種子支配が世界規模で進んでいることを考えると、神奈川県のように遺伝子資源である種子が公共の機関によって保存されているのはとても重要で心強い。在来種を守るために、農家ができることは何か」という質問も出されました。

 藤代さんは、「そう言ってもらえると私たちも励みになりますが、経費の問題もあって、将来の育種に結び付きそうな品種や系統を選抜せざるをえないのが現状です。県によって保存対策もいろいろのようです。今残っている在来種は、味がよいなどどこか必ず長所があります。市場出荷一辺倒では、こうした長所が見えにくいこともあると思います。今は直売所や農産加工など、消費者との接点も多様化してきました。在来種を作らなければ、その良さも消費者に伝わりません。農家の皆さんには、ぜひ在来種を作って、多様な農業や食文化につなげていってほしいと思います」と話しました。

 説明を受けた後、採種ほ場を見学。栽培方法など、藤代さんを質問攻めにしながら、にぎやかに畑を見て回りました。

(新聞「農民」2012.7.30付)
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2012年7月

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