農民連ふるさとネットワーク
石田さん 米づくり奮闘記(3)
2回目は代かきと田植え米が
まるで子どもみたい
2回目の訪問は5月4日。自宅を出かけるころは日も射し、青空ものぞいていました。大林博さん宅に着いた時は雨が本降りで、「作業は中止か」と不安になりました。
この日は大林さんと事前に打ち合わせをして、「今日」と決めていたのです。大林さんは田んぼの状況を見に出かけたままでした。雨足が速くなり、心配そうに外を見ていた奥さんは、「冷夏の時、お父さんは苗が凍らないようにと、ハウスのなかに石油ストーブを持ち込んでいたんですよ。『効果があるかどうかわからないが』と言ってたけど、米がまるで子どもみたい」とつぶやいていました。
大林さんがもどって来て、午前中は代掻(しろか)き、午後から田植えをすることに決まりました。代掻きは天気に左右されることは少なく、しかもトラクターの運転席は冷暖房付きで、「昔よりずいぶん楽になった」そうです。「代掻きのポイントはなんですか?」と尋ねると、「それは平らにして苗を植えやすくすることだよ」と素っ気なく言います。
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雨でも冷暖房完備のトラクターで代かきを決行 |
この間にも、携帯電話に娘さん夫婦や妹さんから農作業の問い合わせが入ってきます。顔をこちらに向けて「田んぼが狭いから手伝いが2人では多いんだ。天気も悪いし」と。そして、日程の応答をしながら父親の笑顔になっていました。そんな大林さんも、「自分の田んぼは、自分以外の者にトラクターや田植え機を運転させない」と伏せた目で言います。
ふと思うのです。米づくりは、親・兄弟・子ども・孫まで、一族郎党が集まりその力で田植えをする。秋には穂が垂れ、稲を刈る。その苦楽をみんなで喜びまた悲しむ。自然と家族と、そのつながりのギリギリのバランスのなかで醸し出すかたちなのだろう、と。
(つづく)
(新聞「農民」2012.7.30付)
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