「農民」記事データベース20120730-1031-05

遺伝子組み換えナタネ自生調査

とどまるところ知らぬ汚染

農民連食品分析センターが結果発表

関連/福岡で自生調査報告集会
  /市民団体の今年春調査でも未検出の地点で多数検出

 農民連食品分析センターのナタネ調査隊はこのほど、2012年3月から5月にかけて行った遺伝子組み換え(GM)ナタネ自生調査の結果(速報値)を発表しました。


採取地点すべてで検出

 今年の調査は、茨城・鹿島港、千葉港、名古屋港、三重・四日市港、神戸港、岡山・宇野港と水島港、博多港で調査が行われ、ナタネが採取されなかった水島港を除くすべての調査地点でGMナタネが検出されました。

 ただし鹿島港では、分析センター調査分は未検出ですが、共同調査を行った「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」調査分からGMが検出されました。

 総採取数は、51個体で、モンサント社が製造ずる除草剤ラウンドアップ(グリホサート成分)をまいても枯れない性質をもつ(RR)GMナタネが9個体、バイエル社の除草剤バスタ(グルホシネート成分)をまいても枯れない(LL)GMナタネが15個体でした。

 また、今年も、1次(簡易)検査では、「GMでない」と判定されたものの、PCR測定機器で行う2次検査で、「GM」と判定される「隠れGM」が、四日市と宇野で見つかりました。

 分析センターの八田純人所長は「輸入後に長距離輸送が行われているところで自生が多い。行政や第三者機関がGM作物の種子や、それを原材料にした製品の運搬経路を集約し、管理のしくみを構築する必要がある」と警鐘を鳴らしています。


福岡で自生調査報告集会

みのう農民組合 山口常博さん

命の限り国産種作る

 7月7日、福岡市で、「GMナタネ自生調査全国報告集会」(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン主催)が行われ、全国から130人が参加しました。調査報告は、農民連食品分析センターや、グリーンコープ共同体など6団体。

 「原発事故から見えた遺伝子組み換え技術の問題点」というテーマで、金川貴博さん(京都学園大学教授)は「遺伝子組み換えは、相手が遺伝子。理解が不十分なところで、何が起こるかの想定が困難。多くの科学技術について安全性を見直すべきことを原発事故が教えている」と語りました。

 その後、キャンペーン代表の天笠啓祐さんと金川さん、分析センター所長の八田純人さんでパネルディスカッション。「隠れGM」について議論になり、天笠さんは、まとめで「力をあわせて、隠れGMナタネの調査を継続しなくては」と締めくくりました。

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討論で意見交換する(左から)天笠さん、金川さん、八田さん=福岡市

 最後に、福岡・みのう農民組合の山口常博さんから、「9年前からナタネ作りを始めたが、刈り取り収穫作業の時期が田植えの準備期間とかぶさり大変だ。油屋さんに、他の油と混ざらないようにと頼むと、そのためには搾り代が高くなるなど簡単なことではない。今回、この集会に参加して、とても励まされた。命の限り国産ナタネを作っていく」と語り、みのう農民組合でもナタネトラストを始める決意を述べました。

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「国産ナタネを作り続ける」と述べる山口さん

 一緒に参加した、大豆畑トラスト第1号会員の石田真奈美さん(福岡市)は、「具体的な数字でみると、こんなに交雑が進んでいたのかと驚いた」と感想を述べていました。


市民団体の今年春調査でも
未検出の地点で多数検出

 2012年も「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」をはじめ、市民団体や生協がGMナタネ調査に取り組みました。

 「キャンペーン」集計分によれば、全国34都道府県で調査が取り組まれ、15府県でGMが検出されました。総検体数は787で、RRは23、LLは96、グリホサート、グルホシネート両方に耐性をもつものは2ありました。

港周辺だけでなく点が面になっている
在来種との交雑も進む

 今回は、茨城県ひたちなか市、山梨県大月市、大阪府高槻市、奈良県、広島県廿日市(はつかいち)市など、今まで検出されたことのなかった場所からも多数検出がみられました。

 今回の調査の特徴について、「キャンペーン」の天笠啓祐代表は、「汚染の拡大があまりにひどい。検出地点が大きく広がり、今までの港周辺だけでなく、点が面になっている状態だ。カラシナや在来ナタネ、他のアブラナ科植物との交雑も進んでいる。2、3年前からはグリホサート耐性(RR)よりグルホシネート耐性(LL)が増えている」と述べています。

(福岡・みのう農民組合 金子徳子)

(新聞「農民」2012.7.30付)
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2012年7月

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