「農民」記事データベース20120730-1031-02

消費税増税されたら…

世論・運動広げ廃案に


 消費税増税法案と社会保障大改悪法案の審議が、参議院特別委員会で行われています。農民連も参加する消費税廃止各界連絡会などは、連日、世論と運動を広げて廃案にしようと国会議員要請や宣伝活動を行っています。

 消費税率が5%の今でさえ、暮らしと経営に大きな打撃を受けている農家にとって、2014年4月から8%、さらに2015年10月から10%に増税されれば、まさに死活問題です。増税によって農業資材には確実に課税されても、販売する農産物の価格には転嫁できません。消費税はたとえ経営が赤字でも売り上げが1000万円を超えれば払わなくてはなりません。茨城県古河市で野菜づくりに励む農家に話を聞きました。


価格転嫁むずかしい

露地栽培農家 金沢 良行さん

 ナスやキャベツ、白菜などを1・8ヘクタールで露地栽培している金沢良行さん(50)は、炎天下のなか、ナスの出荷に追われています。昨年は消費税分として25万円ほどを納めました。「これが倍になるのかと思うと、どうすればいいのか。肥料や農薬代、タネ代や油代はあがるのに、価格への転嫁はむずかしいし、収入が増える見込みはない。キャベツはいま1箱(10キロ)で280円。1玉にしたら35円ですよ。ここからダンボール代や手数料などを差し引いたら手元には何も残らない。節約も限界だし、メシに水でもかけて食えというのか」と怒りの声。「『もうだめだ』とあきらめている農家もみられるが、7月16日に開かれた『原発やめろ』の大集会のように、『消費税なくせ』と叫ばなければ」と語気を強めます。

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ナスの出荷で忙しい。左から初見さん、金沢良行さん、マサさん、正男さん

 また良行さんの父親、正男さん(77)は「このあたりはカボチャの産地だが、商社がニュージーランドから安いカボチャを大量に買い付けたために国産ものの値段が下がっている。輸入もキチンと規制しないとだめだ。TPPなどもってのほか」と、農政のおおもとを批判します。


切り詰めもう限界だ

ハウス栽培農家 因泥(いんでい) 和男さん

 キュウリやサニーレタスを家族4人でハウス栽培している因泥和男さん(57)は、「キュウリは1箱2500円つけばなんとかやっていけるが、最近はずっと2000円前後の安値安定。昨年はサニーレタスが原発事故で大暴落し、東電から賠償金が入ってなんとか所得が出た」と言います。

 しかし「今年は、消費税を25万円ほど払ったが、これが倍になるのかと思うと気が重くなる。ハウスは重油を使うし、ビニール代もかさむ。切り詰めようと思っても限界だ。最近は、毎年のように雹(ひょう)の被害におそわれているし、どうしたらいいのか」と心配します。

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キュウリも安値でこまった。右から因泥文子さん、和男さん、息子の茂雄さんと初見さん

 茨城県西農民センターの初見安男さんは「会員さんの所得を調べたら、日本がWTOに加盟する前の1995年ころは年収400万円くらいあったが、いまはその半分以下の150万円ほど。3分の1の会員が所得も出ない」ときびしい状況を強調。そして「こういう時に増税されたら、『もうやっていけない』と農業をやめる農家もでてくるだろう。なんとしても廃案に追い込まねば」と語っていました。

(新聞「農民」2012.7.30付)
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2012年7月

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