本の紹介
肥田舜太郎著
内部被曝
被爆者6千人と向き合い
被曝に対抗する策を語る
福島原発事故はいまも収束しておらず、危険な状態が続いている。著者の肥田舜太郎さんは1945年8月6日、広島への原爆投下で被曝(ばく)し、その後、内科医として6000人を超える被爆者を治療してきた放射線治療の世界的権威だ。
肥田さんの医療活動に基づいた研究と実践に裏打ちされた考察は鋭い。原子核物理にも精通した解説はわかりやすい。なかでも、「問題なのは高い線量の外部被曝だけで、低線量の内部被曝はいっさい無視できる」と、原発推進の立場から主張してきたアメリカや日本政府に対して、肥田さんら研究者は「ほんの少量の放射性物質でもからだの内部から長時間にわたって被曝することによって重大な障害をおこす」と反論してきた。そして1972年、カナダの研究者ペトカウ氏はこうした主張を実験で明らかにし、低線量被曝の危険性を証明した。
被曝に対抗するためにはどうしたらいいのか。肥田さんは貴重な指摘をしている。それは「生まれつき持っている免疫力に頼り、免疫を弱めない生活」を基本にすることだと言う。そのためには、(1)早寝早起きして睡眠を十分に取る(2)三食をキチンととり、よくかんで食べ、排泄をする。発酵食品など日本の伝統食をとる(3)がん検診を受け、早期発見に努める(4)暴欲・暴食を避け、病気にならないよう努力することなどを薦めている。
肥田さんは「まず、いま放出されている放射性物質を止め、核兵器廃絶・原発の再稼働を許さない大運動を展開すること。このたたかいこそが自らの健康を守り、世界の平和、安全な社会をつくるための共通する課題だ」と訴えている。
▼ 定価 724円+税
▼ 扶桑社新書
(埼玉農民連 松本慎一)
(新聞「農民」2012.7.23付)
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