しいたけ
安全な原木の確保急げ
購入補助の制度徹底を
農民連、林野庁と交渉
関連/「米不足」覆い隠しルール違反の備蓄米放出
農民連と「原発事故問題原木しいたけ生産者連絡会」(代表世話人・車谷年秋)は6月22日、林野庁に対して、原発事故に伴うしいたけ原木の確保などについて要請を行いました。農民連本部、日本販売農業協同組合連合会のほか、埼玉、大阪、奈良、和歌山の各府県から参加しました。
冒頭、林野庁の担当者から5月末時点の、きのこ原木の需給状況についての報告があり、「供給希望量は、年間の全体使用量の約6%に相当する3万4000立方メートル。一方、供給可能量は3000立方メートルで、3万1000立方メートルが不足している」と述べました。
参加者は「安全な原木の供給体制を確立することは急務だ。森林組合の役割も重要であり、政府からの働きかけと十分な支援策を講じてほしい」と求めました。
次に、2011年3月末までに購入した、きのこ原木の2分の1を補助する制度について意見交換しました。
参加者が、補助制度の対象を、東北方面からきのこ原木を購入したものに限定している県があることを指摘すると、林野庁は、「該当する都道府県に連絡し、2012年度からは、東北方面からの購入に限らず、原発事故によって掛かり増しが生じた部分があれば補助の対象になるよう、指導を徹底する」と約束しました。
さらに、12年度の2分の1補助制度について、都道府県が6月議会で補正予算を組んだ日以後に購入したものしか対象にならないと説明している例をあげ、「これでは12年4月1日から補正予算を組むまでの期間は、補助制度を利用できないことになる」と批判しました。林野庁は、制度の欠陥を認めつつ、「東電に賠償請求するなどで対応してほしい。その支援はしていきたい」と答弁しました。
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その後、参加者は交流会を行いました。そのなかで、森林組合などと協力しながら原木の確保に全力をあげるとともに、東電への損害賠償請求に引き続き取り組むことなどを確認しました。
農水省は6月8日、突然、備蓄米4万トン(07〜09年産)の放出を発表しました。「需給調整のための備蓄運営はしない」とした従来の主張にも、放出の際のルールにも反するものです。
農民連の要求は聞き入れずに
昨年度から始まった備蓄米の方針は、100万トンを棚上げ備蓄し、毎年20万トンを買入れて5年間保管した後、飼料用などに20万トンを処分するというもの。また放出は、著しい不作または2年続きの不作の際に、市場を調査して6月末在庫が減少したときに食糧部会の審議を経て実施するなどとしてきました。
農水省は、大震災・津波などの被害分2万トン、福島の放射能汚染による隔離分2万トンの合計4万トンの不足分を補う「特例」と主張しています。しかし、明らかに流通段階で米不足が深刻化して業者間取引の価格が異常に上昇し、炊飯業界などから強く要求されての放出です。農水省は、米価暴落の際に農民連などの備蓄米買い入れ要求には一貫して「需給調整のための買い入れはしない」と拒否しましたが、この主張はもはや通用しません。
農水省の「需給見通し」では、主食用米の今年6月末在庫は189万トンで、昨年同時期の181万トンを8万トンも増えるとしていましたが、その需給見通しも誤りだったことになります。また、備蓄米の放出を、食糧部会の審議も経ずに決定したのは、完全なルール違反であり、その責任も大いに問題にしなければなりません。
米の需要と価格国が責任を持て
一般に、米の不足時に備蓄米を放出し、過剰時には買い入れをして需給と価格の安定を図るのは当然のことです。ただし、その際は需給の実態を詳細に明らかにし、ルールを踏まえた透明性のある対応をすべきです。
大震災以来、米流通が不安定になり、町の米屋さんに米が届かないなどの事態が続いているにもかかわらず、農水省は相変わらず「過剰」を前提に2012年産も需要見通し(797万トン)を下回る生産目標(793万トン)しか配分していません。2012年産の備蓄米も20万トンの目標に対して8万トンしか集まらないことがすでに確定しています。今年の作柄次第では、消費者にまで「米不足」の影響が及びかねません。
市場まかせの米政策を改め、ゆとりある需給計画と国が需給と価格の安定に責任を持つ米政策に早急に転換すべきです。
(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)
(新聞「農民」2012.7.9付)
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